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ふたりの愛情曲線は大丈夫?

ふたりの愛情曲線は大丈夫?

【専門家監修】妊娠中・出産後の夫の態度に要注意!良好な夫婦関係を保つには?<後編>

出産を機に、夫への愛情や幸せなはずのふたりの関係が、今までとはどこか変わってしまう夫婦は少なくありません。度々話題となる家庭内“モラハラ(=モラル・ハラスメント)”は特に危ない関係の一つ。“モラハラ”ってどんなもの?どうやって気づくの?……気になるところを専門家に聞きました!

モラル・ハラスメントって?

Vol.6~7の「夫というひと」はまさに出産を機に直面したモラハラを題材にしたストーリー。実は結婚や出産、転勤、不妊などを機に夫が突如、“モラハラ夫”に変貌することは少なくないそう。

モラハラは、精神的DVの一種で、言葉や態度によって人を傷つけたり、支配したりする精神的な暴力のこと。子どもが産まれ、彼にしか頼れない、ふたりで何とかするしかない、そんな状況下で引き起こされることが多いので、産後は起こりやすい時期の一つ。ぜひママたちは注意をして。

“モラハラ”は亭主関白とは違う

モラハラ夫のイメージの1つとして間違えられやすいのが亭主関白。でもこの2つは全く違うもの。亭主関白な夫は「こうしたい」「これがいい」という揺るぎない一定のルールや価値観があり、妻として対策可能であるのに対し、モラハラ夫の言うことは気分次第。地雷が何処にあるのかわからず、しかも、その地雷は毎日リセットされるので経験値が役に立たないのだそう。例えば、先に言われたことと真逆のことを要求されたり、何を言っても通じず妻が悪いとなじられたり……、理不尽で妻側で対策を立てるのが難しいのが、モラハラ夫の特徴。

妻も最初は「あなたがおかしい」と意見するけれど、逆らうと何倍もの屁理屈を並べ長い説教が始まるので、言っても通らないと諦め、早く謝り終わりにした方がマシだと学習する。それがモラハラによる「恐怖支配」の始まりに。そうやって彼によって、徐々にものを考える力を奪われていってしまう。

モラハラ夫に間違えられやすい「未熟夫」「発達障害の夫」

これってモラハラでは?そう感じても、実はモラハラと紛らわしい行動&言動をする2つの夫のタイプが。「未熟夫」は、妻に配慮したり、夫婦関係を育むことが身についていない精神的に未熟な人。他にもパートナーへの配慮に欠け、わがままや自己中心的な言動から相手を傷つけてしまう人などがそう。そして「発達障害の傾向がある夫」も人との距離感が分からず、悪気なく行動してしまうタイプ。この2つのタイプに関しては、何かしてもらうことを期待して待つよりも、「こうしてくれると嬉しい」「こうしてくれると助かる」と具体的に明確に伝えると改善することも多いです。

ではそれらにも当てはまらないモラハラ夫の特徴とは?

モラハラ夫の行動&言動のチェックリスト

  • 結婚前は親切でとても優しかったが、結婚後や妊娠後に豹変した
  • 「褒められたい」「認められたい」など承認欲求が人一倍強く、認められると有頂天になるが、逆の場合は極端に不機嫌になり、周囲の人を徹底的に悪く言う
  • 友達が少なく、自分にとって利益のある人間しか付き合わない
  • 自分は特別な存在と思い、他人を見下す
  • 弁は立つが相互的な話し合いはできない
  • 束縛が激しく、交友関係を厳しくチェックする
  • 妻の向上心や楽しみを否定する
  • 妻の成功に嫉妬する
  • 突然不機嫌になり、何を言っても無視し口をきかないことがある
  • 人前や子どもの前で妻の発言や行為をダメ出しする
  • 妻が病気になると、心配せず逆に不機嫌になる
  • 「頭が悪い」「役立たず」「努力が足りない」と侮辱する
  • 人から受けた恩恵に感謝することは稀だが、人にしたことはいつまでも忘れず恩を売る

彼の前で自分らしくいられる?それが判断基準

彼の行動や言動が上記のチェックリストに当てはまるかはもちろん、一つの大きな判断基準は「あなたが夫の前で自分らしさを出せているか」。彼の存在にびくびくする、意見が言いにくい、彼の顔色をうかがって自分のやりたいことができない……など自分で考える力を失い、「夫に怒られないか」というのが行動の価値基準になっていたら、それはモラハラの可能性大!!徐々に自信をなくし、安心安全な場所のはずの家庭の中で息苦しく感じたり、ストレスから身体的にも精神的にも不調を感じるようなら、すぐに外部へ相談を!

モラハラは子どもも被害者になる

当然、モラハラ夫の被害対象は妻だけでなく、生まれてくるベビーになることも。子どもにいかにダメなママかを説いたり、気分次第でおもちゃを買ってきて子どもをペットのようにかわいがったり、複数子どもがいる場合は優劣をつけてえこひいきしたりなども。一方、妻も夫への恐怖のあまり、機嫌を損ねるようなことは「パパに内緒ね」と口を封じたり、子どもに嘘をつかせたり、正常な育児の判断ができなくなっていく場合が。子どもの心身の健全な発育に相応しくない環境になってしまう恐れがあり、こうなると「自分さえ我慢すればいい」では済まない問題に!

最善の対処は「利害関係の無い人」に相談をすること

『知識は力』。これってモラハラ?と感じたらまずは情報を集めて。そして誰かに相談をすること。そのときは、なるべく彼の家族ではなく信頼できる人か“利害関係の無い第三者や組織”に。対策をするには、あなたの味方になってくれる人がまずは必要! 相談をしても「モラハラ」を知らない人もいて我慢が足りないとか、子どものために離婚を思いとどまるように諭されることもあるそう。わかってもらえなくても、あきらめずに別の人へ相談を。

「彼との接点を減らし、彼以外の社会と繋がる」ことが大事

できれば少しの間でも、実家に帰るなどして夫から離れ、傷ついた心の回復と今後のことを考える時間をとって。実家や友人との付き合いが疎遠になっている場合は、ママ友や仕事の同僚など彼以外の社会とのつながりを持つことも有効。

気分の落ち込みや身体が重くて思うように家事や育児ができない日が続くようなら、かかりつけ医でいいので一度受診を。離婚や退職、引っ越しなど大きな決断は元気を取り戻してからでOK。何より自身と子どものこれからのことを大切に考えて行動を重ねて。

専門家紹介

【監修】本田りえ先生
臨床心理士。博士。武蔵野大学非常勤講師。武蔵野大学心理臨床センター相談員。DV、ハラスメント、性犯罪などの被害者のこころのケアに携わる。著書に『みんな「夫婦」で病んでいる』(主婦の友社)、『モラル・ハラスメントのすべて』(講談社)。

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