〇呑気に「その時」を待つ。最初はおなかの張りとおしるしから
初産で里帰り出産だった私。
夫を置いて臨月に入る間際に飛行機で1時間半程度の実家に帰って「その時」を待っていました。
臨月の検診ではなかなか子宮口が開いているのが確認できず、「あ~早くお腹痛くならないかな~」なんて呑気なことを言っていました。
そして予定日前日、夜23時ごろに定期的にお腹が張り始めじっと間隔を計っていると大体10分前後。
痛いというよりお腹が張るくらいなので、その4日ほど前に前駆陣痛でフライングで病院に行っていた私は、もう少し様子を見ようと思いました。
そして夜中1時、トイレに行ってみると赤い鮮血が!
これがおしるしか!
寝ている実母に「きた、多分陣痛・・・」と言って病院に連れて行ってもらいました。
〇「とりあえず入院」のはずが、本気の陣痛に!
病院で内診を受け、先生の所見を聞くと「多分今日中には産まれないと思う。帰ってもいいけど、とりあえず入院する?」とのこと。
「はい・・・?今日中・・・?今日中というと、あと23時間は・・・?」
あれ?結構痛いのにまだまだなんだ・・・と私は思い、先生が言うならきっとそうなんだろうと思い、入院することにしてベッドに横たわりじいっと携帯を眺め陣痛の間隔を計っていました。
この時点で夫に電話し、陣痛がきたんだけど今日中には産まれないかも、朝一の飛行機で来てくれても良いけど、お仕事してても良いかも・・・みたいな感じで言っておきました。
しかし、明け方。どんどん強くなる痛み。5時ごろ夫に「こんなに痛くて今日産まれないはずないと思う」とメールをいれました。
すると夫は昼くらいに着く飛行機でこっちに向かうとのことでした。
痛いのと心細いのとハラハラするのとで私は一睡もできずにただただ携帯とにらめっこ。
陣痛は7、8分間隔のままずっと続いていきました。
〇子宮口2センチでいろいろ処置され…激痛、そして涙
朝9時に再度内診があり、先生は難しい顔をして「開いてないんだよね、子宮口が。まだ2センチなんだ。」と言います。
「痛いのに・・・ですか?」と私。
「痛いのに、です。」と先生。
一旦病室に戻ると、助産師さんがやってきて「バルーン入れるからね、浣腸と。」と言います。
バルーン=風船・・・?浣腸はある程度予想していましたが、バルーンは初めて聞いたのできょとんとしていると、「バルーン入れて子宮口広げるよ~」と助産師さんが補足してくれました。
そのバルーン。実際には痛くない人は全く痛くないらしいのですが、私の場合入れたときの痛みが酷く、その場にうずくまって冷や汗たらたら。
看護師さん二人がかりで脇をかかえられ病室へ。
「何、泣いてるの~!(笑)」
気づいたら、私、泣いていました。
だって、お母さんになるってこんなに大変なんだ・・・と、何だか感激してしまっていたのです。
〇今度は赤ちゃんが下がらない!?人口破水、そして陣痛促進剤
バルーンを入れる処置後の陣痛は5分間隔でまだ我慢できる痛み。
一旦帰って、再度来てくれた母と雑談をしながら、たまに赤ちゃんの心拍を測ったりして待っていました。
夫の到着まであと2時間だな~と思っていると、お昼ごろ助産師さんがやってきて、バルーンを外すからと診察室へ行きました。
バルーンを取ると、6センチまで子宮口が開いているとのこと。おお!開くじゃん!と感動していると、「でもね~赤ちゃんが下がってないんだよ~」と先生。
助産師さんが、もう少ししたら破水させるね、破水させたらどんどん進むから、と言います。
ん?今日産まれる(産ませる?)のかな・・・?と思いつつ、私はただただ言われるがままにしていました。
分娩室まで移動し破水させるその頃には陣痛はいよいよ動けないほどの痛みに。
腰をダンプカーで踏まれているかのような痛みがやってくるたびに「ひいぃ!」と恐怖を感じていました。
無事に人口破水もさせ、夫が到着し、陣痛促進剤を点滴し、テレビでよく見るあれです、唸る私に腰をさする夫、かいがいしく飲み物をくれる夫・・・いよいよ産まれるんだ・・・と痛みと闘っていました。
―――うんとこしょ、どっこいしょ。
それでも赤ちゃんは出てきません。(『大きなカブ』風に)
〇痛みのあまり嘔吐。なのにあと4時間かかる…!?「切って!!」と懇願
分娩台に上がって3時間、子宮口は8センチ。あと少し、あと2センチなのに・・・。
寝ている姿勢を起こし、座ってみたり、赤ちゃんに話しかけてみたりしながら待ちますが、もう正気を保っているのが難しいくらいの痛みです。(促進剤を入れているから余計痛いらしいです。)
助産師さんが何度も内診をし、おかしいな~という顔をします。
もう私はこの時点で痛みに耐え切れず吐いていました。
そこへ先生がやってきて、「ちょっとねえ、下から産むの、難しいかもしれんねえ」と言います。
寝てないしね、あと4時間待って開くか、どうか、かなあ。
どうしますか?切りますか?と先生が言います。
そこへ私は食い気味に「切ってええええ!」と絶叫。
〇いざ、帝王切開。でも恐怖でパニック状態に。そして出産
それからいそいそと帝王切開の準備が始まりました。
ここからも大変でした。
麻酔で痛みがなくなり楽になったのは良いけれど、身体が動かない恐怖と、冷静になった私が突然の選択で「お腹を切る」という恐怖が改めてやってきてパニック状態に!
ぶるぶる震える手。それを両側から押さえる看護師さんたち。
「さあ!押すよ!」の声でお腹がぐうううっと押され、同時に赤ちゃんの産声が聞こえました。
ああ、良かった。と、一瞬思いましたが、すぐに吐き気が襲ってきました。
赤ちゃんが取り上げられ、身体を拭かれているのが見えます。
ああ、真っ赤、髪の毛ちゅるんちゅるん・・・。
しかし、気持ち悪い…
吐きます、吐きます!とか言いながら、だんだんと目の焦点が合わなくなっていきます。
〇わたし、もしや命が危なかった?意識を失うという経験
見えないところで「~を~グラム用意!」とか「血圧60、30!」とか・・・
60、30!?え、マジ!!それって危ないんじゃ・・・いや気持ち悪・・・もう・・・もう・・・
「睡眠剤とか投与できませんか・・・」
必死で言った言葉がそれでした。
「バカ!起きろ!赤ちゃん見てなさい!ほら!もう少し!」
すごい声で怒鳴られ、頬を叩かれ、私は一瞬意識を失っていたことが解りました。
きれいに身体を拭かれた赤ちゃんが隣に連れてこられ、それまで泣いていた赤ちゃんがぴたりと泣き止みました。
ああ、はじめまして、あなただったのね、なんて可愛い・・・
可愛い・・・
すみません、吐きそうです。
赤ちゃんはすぐに下げられ、私は後の処置に。
それまで経験したことのないような吐き気と、恐怖と、朦朧とする意識に、処置が終わったと告げられるまで永遠のように感じられました。
〇無事に生まれた!私生きてる!よかった!
処置が終わり、手術台に寝たきり下半身が動かせず、暑いんだか寒いんだか解らないような感じがして、おまけに何だかお腹がまたすっごい痛い・・・これ本当に私大丈夫なんだろうか、と思っていたら夫が連れて来られ、隣で涙を流しはじめました。
それを見て、私はやっと、出産したこと、私は生きていることを実感しました。
あとから聞いたところ、赤ちゃんは首にへその緒を2回半巻きつけて、顔を横向きにしたままだったと。
赤ちゃんが下がってこなかったのはそのせいだったらしいです。
そして、私の異常な吐き気は、出血が多すぎたせい(2リットル・・・!)とのこと。
ぎりぎり輸血をしなくて済みました。
いきなりの帝王切開で、不安だらけの出産でしたが、出産翌日に夫が言った「サムライみたいだったよ」のひとことだけは忘れられません。
ええ、確かに切腹ですとも。
何があるかわからない出産、とにかく無事でよかったです。
だって、我が子はやっぱり可愛い!
産まれてきた我が子は今7ヶ月になり、横を向いて寝、布団を肩から頭にかけて巻きつけるようにかぶって寝るのが好きなようです(笑)
著者:たんこ
年齢:25歳
子どもの年齢:7ヶ月
子どもが産まれてデジタル一眼レフを買い、最近は写真にどっぷりはまっています。
一晩に4、5回起きて泣く我が子に少々寝不足気味・・・、そろそろ復職も考え中です。
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