3人目のこどもが欲しくて、ゆるい感じのタイミング療法で、毎月、妊娠を狙って、夫婦の共同作業に文字通り精を出していたのですが、何も起こらないまま妻の年齢も41になってしまいました。
このまま続けていても、妊娠のチャンスは訪れないのでは、と不安になり、最後の挑戦とばかりに、夫婦で、体外受精へと挑むことに。
都内にある、実績抜群の不妊治療専門の病院を訪ねました。
予約をしたところで、とにかく待たされ、一度の受診が一日がかりになるは当たり前でした。
まず妻が、血液検査から尿検査から、健康診断の結果に問題があれば再検査をして、ありとあらゆる検査をしました。
排卵を促す薬も処方されました。
一方の夫たる私は、といえば、なんの検査もなく、同伴しても、ただ待つだけ、それが3回ほど続いたとき、いよいよ、私の検査になりました。
妻のように、あっちの検査室からこっちの検査室へ、そっちでは問診も、となるのかと思いきや、指定された場所に行くと、磨りガラスの受付窓があき、若い検査担当の女性から透明な高さ10cm、直径5㎝の筒状のケースを無言で渡されました。
無言で受付窓を閉めようとするので
「あの、これに、その、出すんですか?」と聞くと「はい…」と苦笑いされ、いたたまれなくなりました。
周りには、狭い個室が3つあり、その中の一つに入り、扉の鍵を閉めました。
入ってすぐに小さな洗面所、そこで手をよく洗います。
その隣には、一人用の白いソファ。
向かいに小型の薄型テレビ。テレビ台の下には、グラビア誌に毛の生えた程度の、成人向け雑誌が20冊ほど。
パラパラめくってみますが、とても精子を採取できるほどの刺激はありません。
テレビをつけます。
リモコンの操作に手間取りますが、3つの映像を選択できるようで、ためしに一つを再生しかけ、ヘッドホンなりイヤホンはないのかと探しますが、ありません。
ここのフロアは誰も人がおらず、いやにしんとしています。
もし、アダルト動画の女性の嬌声が聞こえたら、限りなく響きそうです。
しかし、イヤホンはありません。
仕方なく、音量を限りなく小さくして、選択した映像を再生します。
見たこともないグラビアアイドルとバーチャルデートをしています。
買い物をして、イタリアンを食べ、カラオケに行き、最後に自宅前でお別れ、映像は終わりました。
精子は採取できません。
頭の中では、先ほどの受付の女性のことがよぎります。
あんまり、遅いと変に思われるかと、なぜか焦ります。
焦ると精子はうまい具合に採取できません。
結局、精子採取にはあまり役立たない映像をがんばって見続け、1時間近くたって、ほんの少量の精子を採取できました。
その日のうちに、精子の検査結果は出ました。
精子の量は少な目、正常な精子の数はぎりぎり標準、精子の運動率は低め、という結果でした。
お気に入りの精子採取推進道具を持参できれば、結果は変わったかも?
著者:モグパパ
年齢:36歳
子どもの年齢:8歳と6歳
6歳年上の妻と、二人の女の子と、妻の母と、女系一家の中で、黒一点のパパとして、どうにか暮らしています。妻の母の小言は、妻経由で聞かされ、妻が小言を言うと、次女が繰り返します。言い返すとケンカになりますが、適当に「はいはい」と言っても食ってかかってきます。誠実な返事は、家庭円満の秘訣なのだなと、実感する日々です。
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