妊娠してから出産の日まで、不安と期待でいっぱいでした。
出産経験のある友達にいろんな話を聞いていましたが、私がうっかり忘れていたことがありました。
妊娠するとお腹が腸を圧迫するので便秘がちになります。
だから予定日前に浣腸をするなりして便を出しておかないと赤ちゃんと一緒に出てくるというのです。
実際にそうなった友人が教えてくれていたのですが、その話を聞いたのが5年以上も前でした。
ありとあらゆる情報を入手し、入院の準備を随分前から用意していましたが、肝心の子供が出てこようとしませんでした。
出産予定日を4日過ぎたにも関わらず陣痛が来ません。
このままでは帝王切開になるかもしれないと思っていると、夜中にジューンといった鈍い痛みを伴ってきました。
早朝5時頃になると、痛みの間隔が短くなってきたので、産院に連絡をして即入院となりました。
陣痛分娩室には数名の助産師さんが出産の準備を始めていました。
「もう少し子宮口が開くのを待ちましょう」
と、指を入れて確認をします。
「お通じはいつ頃ありましたか?」
と聞かれ、もう痛くて痛くてしかたなかった私は
「最近全然出てません」
と答えました。助産師さんには触診をしたときに分かったようです。
そこでふと友人の話を思い出したのです。
「先生、浣腸できますか?」
と聞いてみましたが、時すでに遅しでした。
「大丈夫ですよ、一緒に出してください。」
といってタライを準備しているのです。
痛いのと感動の出産が悲惨なことになりそうなのとで、頭は真っ白になりました。
この会話をしている間、旦那さんは各所に電話で陣痛がはじまったことを連絡していました。
どうしよう!
「助産師さん、旦那さんに見られたくないです。どうしたらいいでしょうか。」
と相談すると、「
大丈夫です。見えないようにしますから」
「でも匂いが・・こんな出産する人いますか?」
と聞くと
「いっぱいいます!」
と笑顔で言って準備を黙々とおこなってました。
(絶対ウソだ)
と心で呟きながらひたすら後悔していました。
痛みもピークになってくると、そんな事すら考えられなくなってきます。
子宮口も十分開き、そろそろ力みましょうかと話が進みましたが、どうやら便が邪魔になりそうだとのこと。
「指で出していいですか?」
と聞かれ、恥ずかしいけれど痛みが限界にきていたので
「旦那さん一瞬だけ出ていて~」
と情けない声で言って分娩室から出てもらいました。
助産師さんが手早く事を済ませると
「もう大丈夫です。安心してください」
と言って旦那さんを呼び入れました。
陣痛の痛みで下半身がプルプルと震えた状態になっていましたが、残された力をフルに出し切って何度か力みました。
もう時間の感覚などはありません。
気を失いそうになりながら、旦那さんの
「大丈夫だよ。頑張るんだよ」
という声と、ギュっと握られた手を覚えています。
たぶん旦那さんも一緒に力んでいたんだと思います。
産まれた瞬間は全く気が付かないほどでした。
「産まれましたよ!おめでとうございます!」
と祝福されながら無事に我が子が誕生しました。
産まれてからも陣痛の痛みはすぐに消えません。
胎盤などが出てくるからです。
傷を縫ったりの処置も大変でしたが、体重などを測り終えてから子供の顔を見せてもらうと、やっと会えた感動で涙が止まりませんでした。
十月十日と言いますが、長くお腹にいた我が子と初めて手をつなぐことができて本当に嬉しくてたまりませんでした。
子供が少し大きくなってから、この時の便の話を旦那さんに聞いてみると
「あの時はテンパってて、そんな事おぼえてない」
との事でした。
思い出が綺麗になってて良かったと安心したと同時に、お産中は綺麗ごとを言っていられないことも分かったのでした。
ゼクシィBaby WEB MAGAZINEの記事
著者:スマイルママ
年齢:35歳
子どもの年齢:2歳
婚活サイトで知り合った旦那さんと結婚。独身の時は設計事務所で経理を担当していました。産後太りで悩んでいたので子供と一緒にスイミングに通った結果、ご飯が美味しくて痩せることができません。
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