妊娠中の楽しみと言えば『胎動』。
お腹がぶるんと揺れたり、ドカドカと内側から連打されたり、びっくりするとともに赤ちゃんの生命を力強く感じられる時です。
妊娠後期に入った頃から、お腹がきゅっと張ることが多くなりました。
ちょっと歩きすぎた時や重いものを持った時にお腹が硬くなりました。
定期検診でお医者さんに一応報告はしましたが、
「すぐ治まるならよくあることだから気にしなくていい」
と言われ、お腹が張ると安静にして張りが治まるのを待っていました。
いつものように少し動きすぎた日、お腹がきゅっと硬くなったので椅子に座ってお腹をなでなでしていました。
すると手に丸い硬いものが当たりました。
手のひらにすっぽり入るくらいの大きさで、おへその横あたりにぽこんと飛び出ていました。
「なんだ、これ?」
丸い形はすごく硬くて、お腹の張った硬い他の部分とは比べ物にならないくらいしっかりとした『丸』でした。
しばらくなでなでしているとお腹の張りが治まり、丸い形もすーっとなくなってしまいました。
『丸』はその後もお腹が張った時に現れました。
不思議に思った私は、定期検診の際にお医者さんに質問しました。
「丸い硬いのがでてくるんですけれど・・・」
検診中はお腹の張りもなく、触診ではその『丸』はわかりませんでした。
「うーん。エコーも特に何も映らないし、赤ちゃんの頭だと思うよ。ちょうどそのあたりに頭があるみたいだし」
とエコー写真で赤ちゃんの向きを教えてくれました。
「赤ちゃんの頭!そんなことがあるの?」
お医者さんの予想外の言葉にとても驚きました。
それからと言うものお腹が張って、ぽこっと『丸』が現れると
「お母さん、ちょっと張り切って動きすぎたかな?ごめんね。今休むね」
とその丸い頭をなでなでしながら話しかけました。
話しかけると不思議と張りも早く治まる気がしました。
そしていよいよ出産。
予定帝王切開だった私は予定通り入院し、手術に向けて最後のエコーを行いました。
執刀医は検診の先生ではなく、初めて見るお医者さんでした。
「あれ?ここ…」
とお腹は張っていませんでしたが、いつも丸が現れるあたりをエコーで何度も見ていました。
なにかあったのかなとドキドキしていたら、
「筋腫があるね。気づかなかった?ここに。小さいから手術するほどじゃないし、経過観察でいいけどね」
と言われました。
「え?筋腫?」
赤ちゃんの頭だと思っていた『丸』は、筋腫だったんです。
あんなに妊娠中、かわいがってた丸が、赤ちゃんではなく筋腫…。
馬鹿馬鹿しくて脱力してしまった出来事でした。
ゼクシィBaby WEB MAGAZINEの記事
著者:あとり
年齢:35歳
子どもの年齢:2歳1カ月の女の子
1歳から保育園に娘を入れて、職場復帰。育児と仕事に奮闘中です。多忙で終電帰りの旦那とやんちゃなオス猫2匹と一緒に暮らしてます。
※プロフィール情報は記事掲載時点の情報です。