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【医師監修】赤ちゃんの落下事故、その時親はどうするべきか。小児科医 森戸やすみ先生に聞く

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4月3日に当サイトに掲載した体験記について、読者の方から多くの声をいただきました。その体験記は「ママが留守の間に赤ちゃんをみていたパパが、オムツ替えの時にベッドから転落させてしまい、ママに知られないよう落下事故を隠した」という内容でした。(元記事の全文はこちらからご覧いただけます)

「妻に知らせないことで、その後万が一子供の状態が悪化した場合にとる対応が違ってくる」というご意見も頂戴しております日々育児をされている読者の皆様に対する配慮に欠けていましたこと、改めてお詫び申し上げます。

今回の件を受けて、実際にこのような状況になった際にどのような対処をするべきなのか、小児科医の森戸やすみ先生にお話を伺いました。

 

 

 

転落が原因で死亡するケースは稀。まずは落ち着いて観察を!

「まず、妻に黙っているというのが一番良くないですよね。トラブルが起こった時こそ、きちんと情報をシェアして対処してほしいものです。

日々小児科に勤務していると、『赤ちゃんがベッドから落ちて頭をぶつけた』と言って慌てて来院される方はとても多いです。ただ、転落が原因で死亡に至るような例は本当にごく稀なので、心配しすぎることはありません。(※厚生労働省「平成25年人口動態統計」によると、0歳児の不慮の事故で『転落』が死因となったのは1例のみ)まずは落ち着いて、赤ちゃんの様子を観察することが大切です。

その上で、受診すべきかどうか判断する必要があります。外傷がある場合はもちろんその処置をする必要がありますが、最も怖いのは『急性硬膜外血腫』や『急性硬膜下血腫』といって、表面上は見えなくても頭の中で出血を起こしているケース。その症状は大きく分けて3つあります。

1.意識障害がある(呼びかけても反応がない、ぼーっとしている、目が合わないなど)
2.痙攣している(月齢の小さい子だと目の動きがおかしいだけということも)
3.何度も嘔吐する

頭を強打した後に、この中のどれか1つでもあればすぐに救急車を呼びましょう。また、その場では特に症状がなくても、しばらく経ってから異変が現れる場合もあります。2日間くらいは注意深く様子をみる必要があるでしょう」

 

受診すべき?様子を見ていい?迷った時には…

「受診すべきかどうか判断がつかない時には、短縮番号『#8000』の小児救急電話相談が便利です。『#8000』に電話をすると、各都道府県の窓口で小児科医や看護師から適切な処置の仕方や受診すべき病院などのアドバイスが受けられます。
小児救急電話相談事業(#8000)について |厚生労働省

また、日本小児科学会が監修している『こどもの救急というHPも知っておくといいですよ。『頭を強くぶつけた』という項目があるので、当てはまるものにチェックをいれていくと、次にどういう行動をとるべきかの判断がつきます。落下事故以外でも、判断に迷う症状があるときにかなり便利に使えると思います。」

 

いざ事故が起こってしまうと、親もパニックになってしまいます。日ごろからどうすべきか前もって頭に入れておく、目に付くところに「緊急時の対応表」を貼っておくなどの工夫が大切かもしれません。

 

ゼクシィBabyみんなの体験記では、妊婦さんや育児中のママやパパが読んで役に立つ体験記をさらに充実させてまいります。

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ゼクシィBabyみんなの体験記編集部

[元記事全文]

息子がまだ寝返りをうち始めたころの話です。

妻が買い物に行っている間、私が息子の面倒を見ることに。息子の場合、泣いたら眠いかミルクかウンチしちゃったかの3パターンととっても単純だったので扱いやすく、妻も安心して私に預けて出かけて行きました。

私がのんきにテレビを見ていると、息子のグズりサインが聞こえてきました。「3パターンのどれかな~?」と思いながらベビーベッドのそばに近づくと、鼻孔をくすぐるホッカホカのウンチの香り。服を脱がせて新しいオムツをお尻の下に滑り込ませ、履いているオムツを開きました。両足を左手で持ち上げて、お尻拭きでお尻をキレイに拭きとって、汚れたオムツを引き抜いてビニール袋に入れ、新しいおむつを履かせて服を着せたら一丁上がり! そして私は背後にあるおむつ入れに、鼻歌交じりに汚れたオムツをポンと捨てたのでした。

すると背後で“ドシンッ”という鈍い音が…。私は悪い予感を抱きつつ振り返ると、息子がベビーベッドから落下して、床でうつ伏せになっていたのです。すぐさま烈火のごとく泣き始めるわが息子。私も慌てて息子を抱き上げます「打ちどころが悪かったらどうしよう」「後から何か後遺症が出てきたらどうしよう」「こんなこと知られたら妻に殺される」などと思いながら、頭をなでたり背中をさすったりいていると、意外とすぐに泣き止んで、普段通りの穏やかな息子に戻ったのです。ベビーベッドのある夫婦のベッドルームはクッション性が高いフローリングだったため、とりあえず大事には至らなかったようです。(ただの言い訳ですが…)

数十分後妻が帰宅。「大丈夫だった?」という妻に問いに、私は多少うわずった声で「うん、全然大丈夫だったよ」と答えました。妻はベッドを覗き込み、息子のいつもと変わらぬ様子に一安心。そして私も息子がどうやら大丈夫であることと、妻に数十分前の大事故に気づかれなかったことに、そっと胸をなでおろしました。

 

息子は現在2歳。わんぱく盛りで家中を走り回り、私にしつこくアンパンチを喰らわせるほど元気に育っています。

ママたちにとっては当たり前のことかもしれませんが、たまにオムツを変えるというイクメンパパたちに一応アドバイス。ベビーベッドの冊を上げ下げするのは多少面倒ですが、数秒でも目を離す場合は、面倒がらずにいちいち上げることをオススメします。乳児の寝返りの動作は一瞬の出来事です。決して侮ることなかれ!

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森戸やすみ先生

小児科専門医。一般小児科、NICUなどを経て、現在は さくらが丘小児科クリニック に勤務。2人の娘の母。朝日新聞アピタルで『 小児科医ママの大丈夫!子育て』連載中。

書籍:『孫育てでもう悩まない!祖父母&親世代の常識ってこんなに違う?祖父母手帳 』 (日本文芸社)など著書多数。