出産前、百貨店で販売職の仕事に就いていた頃。
私にとって母の日はひとつのイベント商戦だったため、自分の母へ感謝の贈り物など、ろくにせずに仕事ばかりしていました。
唯一覚えているのは、仕事帰りに百貨店を退店前にもらったイベント販促物余りのカーネーションを、そのまま母にあげたことです。
それでも母はとても嬉しそうでした。
そんな私も子どもを出産して、バリバリ働く時期を一旦お休みした1年前、初めて母を食事に誘ってみました。
私は里帰り出産をしたので、母には色んなことを助けてもらいました。
それこそ上げ膳据え膳で、私は子どもの世話にだけ集中できる環境を作ってくれました。
母は昔から、自分のことは一番後回しにして家族を最優先する性格だったので、自分の娘と孫が帰ってきてくれるのがとても嬉しい様子でした。
私が「母の日のプレゼントの代わりに食事に行こう。子どもは旦那が見てくれるから。」と言うと、最初は「気持ちだけで充分よ」と言っていましたが、私は母がもう何十年も外で夕食を食べたことがないのを知っていました。
最終的には「どうしても行きたいの。そこはお父さん(主人)と行くような店じゃないから」と言うと、根負けしてOKしてくれました。
食事の当日、時間の15分前に待ち合わせの場所に行くと、精一杯おめかしをした母がすでに立って待っていました。
二人して母娘のくせに、なんだか初めてデートのような気恥ずかしい感じでしたが、お店に行って食事とお酒が進むごとに色んな話ができました。
その中でも、印象的だったのが、
「孫は可愛い。本当に何をしても可愛いと思う。でも、自分の子どもは別。孫とは違って、何歳になっても心配するし、ヒヤヒヤさせられる。でも自分の子どもはやっぱり一番大切で一番可愛い」
という母の言葉です。
私には姉もいるので、娘たちのことを思って言ったのでしょうが、恥ずかしげもなく、酔いに任せたわけでもなく、しっかりとした口調で言う母の様子に、私もびっくりし過ぎて、「うん…」としか言えませんでした。
しかし、自分が親になって、母のその気持ちは少しずつですが何となく分かる気がします。
子どもはいくつになっても親の心配のもとですし、それでもいつだって可愛いもの。
私の母にとって孫の存在はとても可愛いものでしょうし、わたしもその気持ちはとてもよく理解できます。
しかし、母にとっては私もずっと「子ども」のままで、大切で可愛い存在なのだと思うと、とても安心します。
とてもシンプルな想いだけど、大切なことに気づかされた母の日の食事となりました。
年齢:29歳
子どもの年齢:2歳0カ月
大学在学時より、ハンドバッグブランドの販売職として勤務。卒業後は保険会社にて1年勤務するも、販売職への想いが経ち切れずに復職。その後販売の仕事をしながら結婚、妊娠、出産。子どもが1歳半の時に職場復帰するも、夫の転勤により現在休職中。
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