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「神の手」で頑固な逆子は治るのか…?!妊娠34週で『外回転術』を体験

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2010年、32歳での初めての妊娠時。9ヶ月で逆子になってしまった我が子は、逆子体操などの働きかけもむなしく1週間経っても逆子のままでした。

 

お世話になった産院は親子二代のお医者さんが診てくれるところで、ここでは父親を御大先生、息子をジュニア先生としておきます。

そして御大先生は外回転術の名手、逆子を治す「神の手」の持ち主だという噂がありました。

お腹の中の、頑固な逆子。こうなったら、頼るのは御大先生の「神の手」ということで、妊娠34週のある日に半日入院をすることになりました。

 

午前中の予約時間に受付を訪れ、逆子で入院ですと伝えたら、普段の診察室ではなく陣痛室に通され、こちらに着替えてくださいと産院のパジャマを渡して貰いました。

おお、これが憧れの(?)産婦さん入院スタイル…! 

などと、本番の分娩ではなく半日のこととはいえ、そもそも産院に入院するのは初めての経験だったので、不安がありつつもあちこちをキョロキョロ見回し、おのぼりさん気分を味わっていました。

 

こちらでも腹部エコー胎児の位置を確認して貰いましたが、やはりと言おうか、変わらず臀位、お尻が骨盤に収まった逆子のまま。

ベッドに横になって、グラフの打ち出された紙を出すモニタなどの機器につながったミカン大のセンサー2つをお腹につけて貰い(後で知りましたが、これは妊娠後期胎児の状態をチェックするのに行うNSTと一緒でした)、子宮の収縮を抑えるための、張り止めにも使われるウテメリンの点滴投与が始まりました。

この点滴を長時間して、子宮を柔らかくしておくことが、外回転術の成功には重要だそうです。

続いては個室(リゾートホテルの1室のようでした…)に移動するということで、看護師さんに手伝って貰いつつ、点滴スタンドを使いながら、点滴をしたまま歩いて移動。これまた美味しいと噂だった、産院の豪華ランチも頂けました。

 

その後はセンサーも付けたまま、機会があれば少しでも回りやすくなるようにと、胎児の頭がある側を上にして横向きで寝転ぶようにとのことでした。

私の場合は胎児は左側にいたので、右を下にする、という形になりました。 ウテメリンの副作用か、心臓の動悸がやや強まる気がするものの、するべきことはベッドの上でひたすらごろごろ。いや、下にする方向が決まっているから、迂闊にごろごろも出来ない…。

 

持って来た本をパラパラめくってみたり、音楽を聞いたり、携帯をいじってみたり、時々はウトウトしながらも、しかししっかり眠れる訳でもなし。

そんな中でもちゃっかりと15時のおやつもいただき(この時は上向きになって上体を起こしました)、結局やっぱり、ベッドの上でずっとごろごろ。

綺麗な個室でごろごろし倒した午後でしたが、夕方には仕事帰りの夫が産院に来てくれました。

ちなみに当時の夫の心境としては、こちらを心配半分、「神の手」に興味津々の好奇心半分…いや、もしかしたら好奇心の方が勝っていたかもしれません。

同時に看護師さんもいらしてくださり、そろそろ移動しますということでした。

 

お腹の上のセンサーは外して貰い、点滴スタンドを支えにしながら、夫とも一緒に御大先生の診察室へ向かいました。

時間は18時過ぎ、外来の診察は終わった頃合いです。診察室では、最終審判とも言えるエコーでの確認。

ここで逆子が戻っているという場合もあるそうですが…私の場合はやはりと言おうか、頭は上のまま!

「頭は、この辺やな」

アタリをつけるためか、御大先生はさっと黒マジックを取り出すと、私のお腹の皮膚の、胎児の頭の位置に丸を描きました。宴会芸でもないのに、腹に何かを描かれるというのは妙な気分がするものでした。

そして御大先生は、滑り止めのついた、作業用っぽい手袋を両手にはめました。

「これはな、ありがたい手袋なんや。私は長年、これで逆子を治してきたんやで」

御大先生なりの縁起担ぎなんでしょうが、その時の私は「神の手」が実は「神の手袋」だったという事実に衝撃…を受けている余裕はなく、ともかく大人しく動かされてねー! と、必死に祈りました。

しかし力を込めては子宮の筋肉も収縮してしまうだろうから、マタニティビクスの先生の言葉なども思い出しながら、なるべくしっかり呼吸をして、リラックスしておこうと努めていました。

 

御大先生の手が、お腹の上に乗せられます。

ぐっと力を込められたら、お腹の下の方で、関節が鳴る時のようなこきっとした感覚がありました。私の骨盤から、胎児のおしり部分が外れたからなのか…。

そのまま先生は力をかけ続け、私のお腹を押します。

何かがぐるるっと動くような、胎動にも近いそんな感じがありました。

「ふ〜、これで大丈夫やろ」

御大先生が手を離し、大きく息を吐きました。

 

さっと看護師さんが準備をして、腹部エコー胎児の位置を確かめます。

めでたく、頭部が下!

「良かった…!」

思わず、私の口から感動の声が漏れました。

そして、何故かがっちり握手を交わす、御大先生と夫(あれでしょうか、少年漫画のバトル終了後の男の友情みたいなノリで?)。

 

外回転術の施術それ自体は時時間にしては短く、1分も掛かっていないと思います。しかし、大役を果たしてくださった御大先生はかなりお疲れのご様子。

「これね、とっても体力を消耗するんですよ。だから診察が全部終わった後の、夜にやるんです」

と、看護師さんのフォロー。

 

点滴の影響もあってか、私にはあまり判りませんでしたが、なかなかの力が込められていたようだ、とは後の夫の弁。

ウテメリンの効きの違いか、お腹が押されている時でも私自身が痛みを感じることはなく、経験者から聞いていた話とは随分違いましたが、これも妊娠にまつわる個人差のひとつだったんだろうな、と後になって思いました。

 

点滴は外して貰って個室に戻り、再びセンサーをお腹に付けて、しばらくは経過観察とのことでした。

外回転術後の、胎児の状態が無事かどうかの確認といったところでしょうか。夕食もあるとのことで、これまた素敵なディナーが運ばれてきたので、こちらは夫と分け合いながらいただきました。

30分ほど過ぎたところで、問題はないようだとのことで、ようやく入院終了となりました。

 

受付ももう閉まっていたので、精算は次の健診時にまとめてお願いしますと看護婦さんに言われ、荷物をまとめてそのまま帰宅しました(なお、当たり前ですが、後日に食費も込みの半日入院代を支払いました)。

幸いにも以降は逆子になることはなく、約1か月半後、普通分娩にて無事に息子を出産しました。

くしくも御大先生がお産担当の時間帯だったので、あの時胎児を回した「神の手」に、今度は赤ん坊を取り上げて貰えたのでした。

大きくなって言葉を話せるようになった息子に「神の手」の感覚を聞いてみても、本人はまったく覚えていないようですが…。

 

そんな外回転術は、やはり熟練の技が必要になるのと、全体的には成功率が6割程度ということで(御大先生の成功率はきっと、もっと高い筈です)、最近ではやられなくなっているそうです。ちなみに、ジュニア先生もされないそうで。

帝王切開も一般的になり、時代とともに無くなっていく技術なのかなと思いはしますが、あの不思議な感覚は他ではなかなか味わえなさそうな、面白い経験だったと思います。

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著者:Takoos
年齢:38歳
子どもの年齢:5歳・2歳
独身時代の海外在勤中に、福祉先進国な北欧の子育て事情を垣間見る。帰国後は関西と東海の狭間で、妊娠、出産、育児、在宅フリーランスと経験中。好きな言葉は「A life of no regrets」