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[はるな檸檬さんインタビュー 前編]思い出すだけで涙…妊娠や出産がこんなに大変だなんて誰も教えてくれなかった!

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妊娠・出産をコミカルに描いているマンガが多いなか、はるな檸檬さんの『れもん、うむもん!――そして、ママになる――』は妊娠・出産のしんどさをストレートに描いて注目を集めています。自分が経験してはじめて「こんなに大変なんて聞いてないよ!」と不安や悩みに襲われることも多いのが妊娠・出産の現実。そこに本音全開で向きあったはるなさんに当時のことを振り返っていただきました。インタビュー前編では妊娠から出産までのお話をお届けします。


妊娠や出産がこんなに大変だなんて誰も教えてくれなかった

——はるな檸檬さん自身は妊娠する前、妊娠、出産にどんなイメージをお持ちでしたか?

はる檸檬さん(以下、はるな):私も妊娠する前はあんなに大変だとは全然知らなくて、妊婦さんって幸せそうで、たまに「オエッ!」ってなるぐらいなのかな?という薄っぺらいイメージしかありませんでした。母性みたいなものも自然にあふれてきて、出産すると気持ちも幸せモードに自動的に変換されるんだろうなって。

———「妊婦さんは幸せ」、「赤ちゃん連れの新米ママさんは幸せ」という世の中のイメージをくつがえすことを描くのはかなり勇気が必要だったのでは? 

はるな:すごくビクビクしながら描きました。特にちょっと上の世代の人に「みんながんばってるのに、なんでそんなこと言うの? ひとりだけ愚痴を言って」と怒られるだろうなと思ったので、いろんな方向に気を遣いましたね。

でも産院に入院している間ずっと泣いていたので、こういう思いをしているのはきっと私だけじゃないだろうという予感があったんです。そんな思いをしている人がたとえ一人しかいないとしても、「私もそうだったよ」って共感して寄り添いたい。そういう思いがありました。

——— マンガを描き始めたのは産後9ヶ月ぐらいからだったそうですが、辛かったことを思い出すのも大変だったのでは?

はるな:そうですね、思い出すのがイヤすぎて泣きながら描いていました。それぐらい辛かったので、「そうだよな、みんな思い出したくもないからそういうこと言わないんだろうな」と思いました。

———妊娠、出産に関する情報は溢れかえっていますが、どんなに知識が増えても自分の妊娠、出産がどうなるのか誰にもわかりません。その不安の大きさもリアルに伝わってきました。

はるな:いくら他人の話を聞いてもそのまま自分に置き換えることはできないですからね。妊娠中の過ごし方からつわりや腰痛のときどうすれば一番楽なのかということまで、自分で考えて判断しなきゃいけないのもしんどかったです。

同情やアドバイスはいらない。ただ共感して欲しかった

——— つわりがひどかったときのご主人の反応は?

はるな:「大丈夫?」と心配してくれましたけど、昼間は仕事でいなかったので気を使わないぶん楽でした。でも外に出るとなぜか元気になったので、誰にも自分の辛い状況を理解してもらえない孤独感はありました。月一回の健診で食べつわりのことを言っても、つわりがあるのは普通のことだから「いいですね、順調ですね」で終わっちゃいますし。

———— その頃一番求めていたのは何でしょうか?

はるな:やっぱり共感です。解決策がないのは自分でもわかってるし、心配してもらってもイライラするだけなので。つらいときに何か対処して欲しいとかアドバイスがほしいとかではなく、ただ共感してもらいたかった

————食べづわりがおさまったと思ったら妊娠糖尿病になって逆子も直らなくて、マイナートラブルが続くと本当に気が滅入りますね。

はるな:妊娠糖尿病対策として、毎日、指先に針を刺して血をとって糖の数値を調べなくてはいけなかったのですが、それが地味に凹むんですよ。安定期に入ったら入ったでお腹も重くなってきて大変なので、さらにそういうトラブルが重なると不安だらけで。自分がちゃんとしないと赤ちゃんに影響するかもっていうプレッシャーもあるから、何するにしても「これでいいのかな?」って気にしてました。

———臨月まで逆子で結局帝王切開になったわけですが、自然分娩とは違う苦しみがリアルに描かれています。

はるな:帝王切開でももちろん血は出るし、胎盤もはがれて体の中にすごい大きな傷もできるらしいので、私は手をあげるのもしんどいぐらいすごく体力を消耗しました。出産は本当に人それぞれなので、私より全然平気な人もそうじゃない人もいると思いますけど、私はほんとうにしんどくて動けなかったんです。

フクチマミさんの『マンガで読む 妊娠・出産の予習BOOK』という本のなかに、帝王切開のあと点滴の管を抱えて歩くのさえしんどいって書いてあったので、そのぐらいは想像していたんですけど、実際は想像をはるかに超えるしんどさでしたね。


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その頃から、他人のちょっとした言動に涙したりすごくショックを受けたり、精神的にかなり不安定になってしまったはるなさん。後編では産後うつ一歩手前まで陥ってしまった当時の様子について語っていただきます。

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はるな檸檬(はるな・れもん)

1983年宮崎県生まれ。2010年、宝塚ヲタクを題材にしたWEB連載「ZUCCA×ZUCA」にてマンガ家デビュー。連載をまとめた『ZUCCA×ZUCA』は全10巻の人気シリーズとなる。その他の著書に自身の読書遍歴を描いた『れもん、よむもん!』や『タカラヅカ・ハンドブック』(雨宮まみとの共著)がある。

(取材・文 樺山美夏)