私は出産前は街中であまり子どもに関心を持つほうではありませんでした。
私のパートナーは「バツイチ」で、子どもが2人います(同居はしておらず、前妻が親権者なので月に1度面会しています)。
子育て経験者であるパートナーは、道行く子どもにニコニコと笑いかけ、困っているお母さんがいれば積極的に助ける…。
という「経験者ならでは」の行動をよくとっていました。
私は経験がないし、どうしていいか全然わからず、パートナーが子どもにニコニコしているのも「子どもが好きなんだな」「世間にはこういう人いるよね」くらいの気持ちで見ていました。
そんな「子どもに優しい人々=チーム子育て」の皆さんとは無縁の生活をしていた私でしたが、自分が妊婦になると…「チーム子育て」の新人として扱われるようになりました。
まず、子育てが終わったおばちゃん、おばあちゃんたちから
「いつ産まれるの?」
とか声をかけてもらう機会が増えます。
街中で知らない人と会話するなんて、今まであまりなかったので、不思議な気持ちになりました。
お腹が大きくなったころ、病院に健診にいった帰り、病院近くのバス停でバスを待っていました。
「今何ヶ月ですか?」
と男性に声をかけられました。
こういうふうに声をかけられるのは、女性が多かったので比較的若めの男性に聞かれるのは珍しいなと思いつつ「8ヵ月です」と答えました。
「もうすぐですね〜〜。うち、今日生まれたんですよ」
とのこと。病院の前のバス停なので、そうか、出産に立ち会ったお父さんが今から帰るのか、と気が付きました。
「今日生まれたんですね! おめでとうございます!」と答えました。するとそこから…
「大変だったんですよ。2日間陣痛が続いたけど、産まれなくて…結局最後は帝王切開したんですけど、早く切ってくれたらよかった。ボクは今ちょうど仕事が休みだったので、病院に2泊してて、これから帰ります」
「近くのおじいちゃん先生のところで健診していたんですけど、体重制限とかなくて20キロくらい太っちゃって…太ると難産になるって聞いてたのに妻は気にしなくて」
「実際難産になって、今『だから太るなって言ったのに』って言ったら一生恨まれると思って言えなかった」
「でも無事に産まれてよかった。妻は本当に大変そうで、妻のお母さんにも『かわいそう』とか言われちゃって」
と、トークが止まらない!!!
来たバスに乗ってからもずっと話を聞いていました。
よくみればヒゲものびっぱなしだし、眠そうだし、このお父さんになったばかりのこの人も、頑張ったんだな〜。そして寝不足と子どもが生まれた嬉しさで謎のテンションなんだろうな! と思って「お疲れ様、おめでとうございます」とニコニコ話を聞いてしまいました。
最後は「じゃあ、出産がんばってください!」と
応援してもらってバスを降りました。
世間は妊婦に厳しいとか、電車に乗ると怖いとかそういう話も聞いていましたが、こういう「チーム子育て」みたいなこともたくさんあるんだな〜と思いました。
知らないおばちゃんが優しくしてくれたり、知らない人の出産もお互い祝ったり「意外と世間は温かい!」と思いました。
優しくしてもらえると、自分も優しくするぞ〜〜と思うし、イヤな目にあったら他の人にはイヤな目にあってほしくない、と思うので、今では自分もすっかり「チーム子育て」の一員です。
著者:水谷さるころ
年齢:40歳
子どもの年齢:2歳
1976年生まれ。イラストレーター・マンガ家。女子美術短期大学卒。「30日間世界一周!(全3巻)」「35日間世界一周!!(全5巻)」「世界ボンクラ2人旅! タイ・ベトナム(全2巻)」発売中。×イチ同士の再婚で現在は事実婚。2014年に出産し男児の母。ブログ「マイル日記」を平日毎日更新中。空手弐段。【新刊情報】結婚をして離婚。そして再婚に事実婚を選んだ、26歳から36歳までの体験を描いたエッセイコミック「結婚さえできればいいと思っていたけど」(幻冬舎)より10月27日に発売!
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