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30年前と同じ…母が出産した病院で、今度は私の番。母子3代で乗り越えたお産

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30歳の誕生日を迎えた日、私は母と産婦人科にいた。その日は母が予定がなかったので定期検診に一緒についてきてくれたのだった。

里帰り出産をすることに決めていた私は、迷いなく母が自分を産んでくれた地元の産院を選んだ。30年前の同じ日、同じ場所に二人でいたんだなあと思うとなんとなく不思議な感じがする。

 

ふと自分が生まれた時のことを母に尋ねた。母は懐かしそうに応える。

「あなたが生まれたときも今日みたいに天気のいい暑い日だったなあ。

前日の昼に陣痛がはじまってここに来たら『まだまだですね』って言われて自宅に帰らされたの。でも痛くて痛くて。我慢できずに夕方もう一度来たら、なんとか陣痛室へ通してもらえたものの、今度はなかなか陣痛が強くならなくてね。一晩中うなってた。

いざ分娩室へ移ってもなかなか出てきてくれないから、助産師さんがいよいよ『吸引か鉗子で引っ張り出しましょうか?』って言い出して。『あとちょっと頑張らせてくださいー!』って断ったなあ。結局丸一日かかって、次の日のお昼にあなたが生まれたのよ」

自分が生まれた時のことは何度か聞いたことがあったが、その日の母の話は産院で聞くからか、自分が出産を控えているからか、よりリアリティをもって響いた。

私ももうすぐここでお産をするんだなあ。不安もあるけど私も母になれることが楽しみだった。

 

それから10日後。夜中の3時に陣痛が始まった。父と母は既に眠っていて起こすのは申し訳ないし、明日の朝になったら産院に連れて行ってもらえば大丈夫だろう。私は念のため主人に連絡をいれ、眠りに就こうと部屋の電気を消した。

ところが定期的に痛みの波が押し寄せてきてとても眠れそうにない。初めて迎える陣痛は私をとても不安にさせる。

これから一体どれくらい痛くなるんだろう?

まだ経験したことのない「出産」に恐怖を感じていた。一人でいられなくなった私は両親を起こし産婦人科へ連れて行ってもらった。

 

産婦人科へ着くと最初に入院する部屋へ通され、そこで着替えてから陣痛室へ来るように言われた。陣痛の合間を縫って準備をしている私を母が手伝ってくれる。

父は「母さんの時は一回帰らされたし、今回も帰らされると思ってた」と呑気に笑っていた。

母が陣痛室まで送ってくれて「じゃあ、頑張るんだよ」とエールをもらい別れようとすると「あれ?立ち会わないんですか?」と助産師さんに声をかけられる。

昼前には主人が到着するし、夜中で睡眠もろくにとってない母に申し訳なかったので断ったが「付き添いの方がいる方が心強いですよ」と助産師さんに言われ急遽、母が一緒にいてくれることになった。

 

それから4時間。朝8時になる前に赤ちゃんが生まれた。

母は陣痛室では腰のマッサージを、分娩室ではうちわであおぎながら水分補給をしてくれた。

二人ともくたくたになっていたので赤ちゃんと対面した時は母も私もぼろぼろ泣いた。

主人は始発に乗っても間に合わなかった。それほどスムーズなお産だった。

助産師さんが「初産してはかなりの安産でしたね」と褒めてくれた。

全身汗だくでぐったりしていた私は内心「これで安産?だったら世の中のお母さん、みんなすごい…」という思いだった。

 

入院生活が始まり、オムツ替えと授乳をひたすら繰り返した。朝昼晩、時間かまわず赤ちゃんは泣きわめくが、私はとっても楽しかった。

お世話が一段落してくたくたになっていても、赤ちゃんの寝顔が見たくてベビーベッドをずっと覗き込み、とても幸せだった。

 

ふと母のことを思う。私はいつも母に何かしてもらうばかりで迷惑をかけることしかしていないけど、母にとってはそれが幸せだったんだなあ。

すやすや眠る赤ちゃんの顔を見ながら、私の寝顔を見て母も同じように感じていたのだろうと思うと胸がいっぱいになった。

 

お見舞いに来てくれた母に、照れくさいながらも出産に立ち会ってくれたことへの感謝と今どんなに幸せかを伝えた。

「お母さんもこんな気持ちで私を産んで育ててくれたんだね」と話しながら思わず涙が溢れる。

ふと母に聞いてみた。「お母さんは出産のとき一人だったんでしょう?怖くなかったの?」

私が安産だったのは母がついていてくれたからだ。母のおかげで安心してお産できたからだ。

 

母はにこっと笑い「だって、あなたが一緒だったじゃない」と言った。

そっか。赤ちゃんも命懸けで私に会いに来てくれたんだなあ。窓の外はきっと30年前と同じはずの、晴天の暑い日だった。

著者:みかんいろ

7月に第1子を出産しました。

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