さてさて、無事に出産が済んだ私です。
無事といいつつ、帝王切開がこんなに辛いとは……。
昨日お腹をばっさり切ったばかりだというのに、翌日から立って自分でトイレに行き、そして授乳に行かなければなりません。
歩き方は…完全に壊れかけたASIMO…。
切った傷と後陣痛のダブルパンチ…。知識としては知っていたし、自分は痛みに強いと思っていたけど、予想を超える痛みでした。
そして噂には聞いていた授乳…。
でない! 全然出ない!!!!!
産まれたばかりの息子は吸ってくれるが、びっくりするほど強い吸引力!!
ぎゃーッ! 胸に走る激痛。
「出産は、痛みのデパートや〜〜〜〜!」
と、彦麻呂さん風に心の中で叫びました。
「乳首が柔らかくなってない」のと人生初の乳腺使用に全然体がついていきません。
満身創痍なところに更に栄養を吸われるのか…。
赤ちゃんって……寄生生物みたい…とかその時は思ってしまいました……。
そして私は全然母乳が出ませんでした。
胸は張っているけど、でも出ない…!
授乳室にいる他のお母さんたちは、時間を計り、そして授乳後に体重を量りどんどん部屋から出て行ってしまいます。
私はというといつまで経っても授乳が終わらず、誰もいなくなってから
「おっぱい出ません…」とミルクをもらって飲ませてから帰ることに…。
授乳室の中が「授乳」という競技を始めたスケートリンクのようなものに見えて
まだ名前も決まってない赤ちゃんと私はペアになって初日…。
じゃんじゃん出まくって搾乳しないと追いつかないお母さんがハイスコア選手だとしたら片方5分くらいで終わるお母さん、10分くらいで終わるお母さん…と順位がついていて
自分は30分経っても終わらず部屋に残される落ちこぼれ授乳選手の気分でした。
入院中はまるで「合宿所」みたいだなと思いました。
そしてそれは数日間で「赤ちゃんの世話」をたたき込まれるバイトの研修合宿です。
赤ちゃんの抱き方、オムツの替え方、授乳の仕方、ミルクの与え方、沐浴の仕方……。
慣れない仕事を必死に覚えなくてはいけない。
しかも、こんなに頑張って仕事覚えても、これは0円! 報酬無し!
やっていけるのかな…と不安になったのは出産3日目くらいでした。
が。
とうとうやってくるのです。
妊娠中も全然多幸感に包まれず、産む時も冷静、産んだ後も冷静、そして不安…。
ずっとそんな感じだった私に、兆しが現れたのは出産4日目のことでした。
母子同室になって、まだ名前も決まっていない息子が横に一緒に寝ていました。
私はスマホで色々調べたり、買い物をしたり、日記を書いたりしていましたが、ふと赤ちゃんのほうを見ると…。
めちゃガン見されていました。
無言で。
はっっっ! 起きてた!? 泣きもせず、こっちを見ている…!
そしてしばらく見つめ合ってから気が付きました。
………あれ?
この人、なんだかすごい…かわいくない????
他の赤ちゃんより、全然なんだか…
かわいくない????
頭のどこかのドアがパッカーンと開いたような、気分…。
うわ、この人、かわいい〜。
と、突然なりました。
うおおおお、これかーー、子どもがかわいいってこんな感じなのかー!
と、その日以来ずっと「息子がかわいい」となっております。
ゼクシィBaby WEB MAGAZINEの記事
著者:水谷さるころ
年齢:41歳
子どもの年齢:2歳
1976年生まれ。イラストレーター・マンガ家。女子美術短期大学卒。「30日間世界一周!(全3巻)」「35日間世界一周!!(全5巻)」「世界ボンクラ2人旅! タイ・ベトナム(全2巻)」発売中。×イチ同士の再婚で現在は事実婚。2014年に出産し男児の母。ブログ「マイル日記」を平日毎日更新中。空手弐段。
【新刊情報】結婚をして離婚。そして再婚に事実婚を選んだ、26歳から36歳までの体験を描いたエッセイコミック「結婚さえできればいいと思っていたけど」(幻冬舎)
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