結婚3年目にして、授かった第一子。
初産は陣痛が始まってから分娩までが長い、ということも、陣痛はとても痛いということも知識として身につけていました。
しかし、なんとなく私はスピード出産で、安産だろうと思っていたのです。なぜなら、私の母の出産がスピード出産の超安産だったから。
私は母の第一子でしたが、陣痛が始まってから、6時間で産まれました。
母の場合、病院についた時点で子宮口は全開で、そのまま分娩室に連れていかれて出産。
私には2人の妹がいますが、母は3人産んでいずれの出産の際も陣痛室ですごしたことがないそうです。
そんな母と私は体格がそっくりで、私は妊娠するずっと前から、安産体型だと言われていたのです。そのため、痛みに強くないにもかかわらず、普通分娩を選択しました。
心配だけど、たぶん安産。たぶんスパーンってうまれる。そう思いながら過ごしていたら、あっという間に正産期になりました。
37週6日の検診行ったところ、子宮口が2センチ開いているとのこと。
そしてその夜、なんとなくお腹に痛みを感じました。陣痛ってほどじゃないようななんとなーくな痛み。でも、陣痛も最初はそんなにいたくないって言うしなー…うーん。
結局、痛みが気になり一睡も出来ずに朝を迎えました。
朝の時点では痛みは5分間隔。
耐えられないほど痛くないけど、なんだかわからんし、陣痛だったら怖いし、ぼーっとしていてここで産まれたら本当にヤバい(その時は真剣にそう思いました)、と思い病院に電話することにしました。
病院に到着後、当直の先生に診察を受け、入院となりました。
しかし、痛みは強くならず間隔も間が空いてきました。付き添いできていた母と夫と楽しくお話ができちゃう始末。子宮口も2センチから開いてきません。
助産師さんからお産が進むように病院内を散歩してと指示が出て、病棟をクラゲのようにただよう私。なんでお産が進まないの…?
戻ってきてNSTを付けると、しばらくしてビーッビーッと警戒音がなりました。助産師さんがやってきて、センサーの位置を調節したり機械をいじったり。
何が何だかわからないまま、助産師さんの「お母さん、深呼吸してー、はい、フー」指示に従い深呼吸。
赤ちゃんの心音は正常に戻りましたが、助産師さんの見立てでは、赤ちゃんにへその緒が巻きついてる可能性があるとのことでした。
まじか…へその緒巻きついてて、赤ちゃん苦しいんじゃないの!?どうしよう!?と私は大慌て。
安静にして様子を見ることになりました。
やがて夜になり、お産はまだ先とのことで付き添いの母と夫は一時帰宅。
私は陣痛室で1人しょんぼり。なんでお産が進まないのか、赤ちゃんは大丈夫なのか…、私が悪いのか…。
陣痛室は6人部屋で、後から来た妊婦さんが気がつくともう産んでいます。近くの分娩室で上がる産声に、すごいなあと思いつつ、私の赤ちゃん大丈夫かなあと感傷的に。
安産型じゃなかったのかな私。
思ってたのと違うなあ。
朝になり、院長先生に診察してもらいました。
診察の結果、お産は進んでおらず、陣痛も弱く前駆陣痛かもしれない、と言われました。
赤ちゃんは元気なので陣痛促進剤を使うか、退院して自宅で待機するか、どちらか選んでほしいとのこと。
赤ちゃんは元気、と先生にはっきり言われホッとした気持ちに。陣痛促進剤もリスクがあるとの説明だったので、一時帰宅することにしました。
帰宅しながら、こ、これがフライング入院か…!勘違い、恥ずかしい…!と一気に恥ずかしさがこみ上げました。
でも、母も父も夫も、そんなこともあるさ、赤ちゃんが元気でよかったじゃないと優しい言葉をかけてくれたのです。母も夫も仕事を休んで付き添ってくれたのに。家族の優しさに救われました。それに、赤ちゃんは元気でよかった…
帰宅してからはいつ産まれるか?が気になって仕方ありません。もしかして、産まれるのやめちゃった?
赤ちゃんに会いたい、その思いは日増しに強くなり、試せるものはなんでも試しました。
ラズベリーリーフティーはガンガン飲みましたし、マタニティーヨガは朝晩2回して、ラジオ体操もして、スクワットもして…夫が休みの日は4キロのウォーキングもして…ジンクスも試しました。焼肉にも行ったし、オロナミンCも飲みました。
それでも、陣痛にはなりません。
そして、迎えた予定日前日39週6日の検診の日。
おいおい、きみはいつになったら出てくるんだい。ついに検診の割引チケットなくなっちゃったよ。
次までに出てきてくれないと実費だよ…。
そう心の中で語りかけながら、内診台に上がると先生から「だいぶ下がってますね」「あれ、子宮口4センチあいてますね」との言葉が。
NSTをつけてみましたが、陣痛は来ていないとのこと。
えー!!
子宮口4センチなのに、陣痛が来ていないって、そんなことある?!
出てきたくなさすぎじゃない?出口開きかけてるのに、粘りすぎだよ!
ここまで来ると、頑固者の我が子がなんか面白くなってしまいました。
先生によると陣痛が始まったら早いかもとのこと。
痛かったら早くきちゃってくださいね、
それは前駆陣痛じゃないはずですからと言われました。
また、いきなりお産が進むのが怖いので、3日後の検診には入院の用意をしてきてください、
そこで陣痛きてなかったら誘発になるかもしれませんとも言われました。
なんだかんだスピード出産になりそうだなあと思いながら、自宅へのバスを待ちます。
そうしたら、なんだかお腹が痛いのです。
けっこう。
…あれー?なんかお腹、痛いなぁ。
でもでも、また前駆陣痛かもしれないし。
そんな思いが頭を駆け巡ります。
真っ青な顔をして、無口で震えている私をみて、
検診に付き添ってくれた母はしきりに病院へ戻ったほうがいいと言うのですが、
私はそれを拒否。
思いは1つです。
…今度もフライング入院だったら、もう恥ずかしくて死ぬ!!!!
なんとか帰宅して、布団に横になる私。
今思えばそんな場合じゃないのですが、
しばらくスクワットまでしていました。
母は30分に1回は病院に電話しろと急かします。
なにしろ、母はスピード出産3回経験者。
産まれるんじゃないかと気が気でなかったそうです。
家について、4時間。
いやこれは前駆陣痛じゃない気がする、
というか絶対違うわ。きっちり5分だし。
なんか出そうなくらい痛いし!
陣痛を確信した私は、病院に電話をし、再度入院することになりました。
時間は17時ごろでした。
しかし、診察の結果子宮口は4センチのままでした。
またフライング入院かとドキドキしましたが、
助産師さんからお産にはなると思いますよと言われ、一安心。
母に立ち会い予定の旦那を呼んでもらいました。
それからしばらくは会話する余裕もあったのですが、NSTから警戒音が。
今度は深呼吸しても何をしても、
赤ちゃん心拍が戻りません。
助産師さんがバタバタと酸素マスクの用意をして、私に取り付けます。
酸素マスクをしてから、心拍は安定しましたが、やっぱりへその緒が巻きついてるのかなと不安でたまりませんでした。
21時ごろ、陣痛が本気を出し始めます。
内臓全部が外に出て行っちゃうんじゃないかと思うくらいつよい、下痢を100倍にしたような痛み。
陣痛室は6人部屋なのですが、声が我慢できません。
しかも、他の人は出していないような雄々しい声が意図せず出ちゃうのです。
地を這うような野太い声。
痛い、みんなどうやって産んでるんだ…!この雄々しい声はどう我慢したらいいのか?!
私に出産は無理だったんだ…!リタイアボタンがあったら今すぐ押す!
助産師さんに声はあんまり出さないのよとしきりに注意されつつ、必死に耐えます。
22時ごろ、助産師さんが進み具合を見てくれましたが結果は子宮口5センチ。
1センチしか進んでない…!
「産まれるのは明け方かしら。頑張りましょうね」と言われて、反射的に涙目になりました。
心が折れる瞬間って、こういうことを言うんだなあと思いつつ、半べそで頑張ります、と呟きました。
こんなはずじゃなかった感がマックスだったのが、この時間帯でした。
23時ごろ。股のほうから、ブチっと衝撃が伝わりました。
なんかわからんけど、ブチって言った!股があったかい!これは、破水!
一気に頭が冷えて、ナースコールを押し、破水したようだと伝えました。
痛みとは違う感覚が襲いはじめます。
いきみ感がすごいのです。もう出ちゃう。
なるべくナースコールはしないように
頑張っていたのですが(ナースコールしなくても、声がうるさいので、定期的に助産師さんはきていた)、我慢ならなくなり、ナースコール。
助産師さんの内診の結果、子宮口は8センチ。
いきみ感に耐えながら、
ややったー!お産が進んだよお!!と喜びました。
しばらくして助産師さんから、いきんでよしの許可が出て、いきみました。
無我夢中だったので、あんまり覚えていません。
辛すぎて、夫の髪の毛を引っ張ってしまったような記憶があります。
ごめんね、夫。
しばらくして、助産師さんから分娩室に行こうか!と言われました。
え?産んでいい?わーい!終わる!赤ちゃん会える!
と歓喜したのもつかの間。
さあ捕まって!と助産師さん。
え?歩いていくの?
反射的に「無理です」と拒否しましたが、
「無理じゃない!廊下で産んじゃだめだよ!いくよ!」と無理やりかかえられました。
廊下で産んじゃだめ。という言葉が耳に残り、
渾身の力を振り絞って、分娩室までダッシュしました。
もちろん、実際はそんな速度は出ていなかったようですが、
丁度トイレから戻ってきた夫によると「妊婦に出せる速度じゃなかった。ゴキブリみたいだった。」とのこと。
これまた渾身の力を振り絞り、無理やり分娩台にのりました。
そこで1つ違和感を感じたのです。
股に何か挟まってない?
なんだろう?え?なんだ?
またしてもパニックになった私は、
助産師さんに出せる限り大きな声で質問をしました。
「あの、すいません!なにか、股に挟まってませんか?!」
その場にいた助産師さん、丁度きたところの産科医さん、一同が一瞬シン、となりました。
そして、爆笑。
なんか聞いちゃいけないことを聞いたようだと思いましたが、
陣痛がきて気がつきました。
挟まってるのは赤ちゃんの頭だってことに…
気がついたと同時に会陰切開しますねとのひとこと。
即座にどうぞ!おねがいします!と返事。
会陰切開が終わってすぐ夫が入室し、2回いきんで1時57分、娘、誕生。
元気な産声を上げてくれた娘。
心配していた気持ちが、一気に嬉しい!に変わりました。
結果的には分娩台あがって10分の安産でした。
フライング入院から出産まで、想像していたことと違うことが多く、恥ずかしくなったり落ち込んだり、気持ちが随分揺れ動きました。
でも、子供を守るためには、妊娠中心配なことや痛みがあるなら、お医者さんにかかるのは当然のこと。
今は、お医者さんにかかった結果その時点では入院と一時退院がベストだったんだ、と思えるようになりました。
長くなりましたが、読んでいただいた方が少しでも笑ったり安心してもらえれば幸いです。
ゼクシィBaby WEB MAGAZINEの記事
著者:なら
2017年3月に長女を出産した新人母ちゃんです。
心配性、詰めが甘い性格。
アホな行動が多いです。
無謀にも8月から職場復帰を画策中。
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