去年の夏に、子ども達を連れて海に二泊三日することになった。場所が不便な所だったからか、泊まり客は我々家族しかいなかった。
前回の記事:「パパ、嫌」と8年間言われ続けた夫が、それでも育児を人任せにしなかったワケ by とけいまわり
最後の晩に、次女が「最後はお父さんと一緒に男湯の方に入ろうか」と言い出した。長女が「いや、私はお母さんの方に入るから…」と答えたところで、次女が泣き出して止まらない。
お風呂場でもずっと泣いており、長女は次女に泣いている理由を聞いた。
「私が男湯に行かなかったから泣いてるの?」
「男湯がどんなのが見たかったの?」
「たまにはお父さんと入りたかったの?」と、1つ1つ理由を確かめていたが、次女は全部に首を振った。
長女はしばらく湯船に浸かったり体を洗ったりしてから、先ほどと同じような質問を繰り返した。次女はずっと首を横に振り続けた。長女は「そっか~ちがうのか~・・・」と言って、また湯船に入った。
長女が湯船から上がると、まだグスグス泣いている次女に再び同じような質問をした。
私は、「その質問はさっきから何度も聞いたやつ・・・」と思って聞いていたが、長女は「そっか~、こういう事かなあ~・・・」と少しずつ言葉を変えながら聞いて、次女から言葉を引き出していった。
「お父さんが毎日お仕事遅くてあんまり家族とお話とかできてないから、せめて旅行の時ぐらい一緒に入ってあげたかったのか~・・・お父さん一人で寂しいかもって心配になっちゃったんだねえ~・・・」と言うと、次女がこくんと頷いた。
最後にみんなでお互いの背中を洗いっこして、次女が笑顔になって終了した。「どうしたらこれからお父さんが寂しくなくなるか作戦会議をするから」と言って、子ども達は風呂場から部屋に向かった。
夜、布団の中で、長女に「泣いている子とお話するコツ」を聞いた。長女は「ゆっくり優しい声でたくさん質問をすることかなあ。」と言った。
「そのうち、泣いてる子が『私の気持ちが分かってもらえた』って安心する時がくるのね。そうすると、その子は自分の心のドアを見せてくれる。そこからは自然と気持ちが落ち着くから、その心のドアを見せてくれるまでゆっくり話しかけるのがコツかなあ。とにかく『泣きやませよう』とか思わないようにするのね。」
「なるほどねえ」
「いっぱい話しかけていく内に、泣いている子も段々落ち着いてきて、自分が泣いている理由を言葉にできるようになってくるのね。言葉にできたら少しはすっきりできるから。」
子どもが泣いているとき、こちらに余裕がなければ泣き声がしんどかった。早く泣き止んで欲しいと思った。
でも、「辛いねえ」「痛かったねえ」って寄り添うだけで、何とかして泣き止ませなきゃ・・・と考えなくてもいいのかもな・・・そう思うようになってからは、子どもと向き合うのが少し楽になった気がする。
そして、時々このお風呂の話を思い出すのだ。
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著者:とけいまわり
年齢:40代
子どもの年齢:9歳、7歳、5歳
小4長女、小2次女、5歳末っ子の三姉妹の母。40代教育職WM。趣味は囲碁と漫画
生き物、宇宙等、科学の話題が好き。人混みが苦手で一人が落ち着く 。プロフィールイラストは、にゃぐははさん作@hahanyagu
Twitter:@ajitukenorikiti
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