あれは忘れもしない去年の二月末日…。
娘の突然の嘔吐が、ことの始まりでした。
当時、私たちはまだ生まれたての息子を迎えたばかりで、
幸せそうに弟を可愛がる娘に、夫も私も、目じりが下がりっぱなしでした。
そこに、突然の嘔吐。
吐き気への娘なりの抵抗なのか、『お水ください!』と言っては盛大に嘔吐する娘。
そしてそれに続いて始まる水下痢、アンド発熱。
当時まだオムツを使用していた娘はトイレに駆け込むことはなかったのですが、
激しい水下痢はオムツを余裕で貫通し、レジャーシートを敷いて対応するしかありませんでした。
脱水させるわけにはいかないと必死に水分補給をさせるも、上から下からマーライオン。
いつも元気だった娘のつらそうな姿に、こちらも焦る一方でした。
4歳の娘でもこんな状態なのに、これがもし、生後一ヶ月の息子に伝染したら…?
その恐怖はありましたが、幼い娘を隔離することも出来ず…。
狭いマンション内、吐瀉物や排泄物の処理・消毒を慎重に行い、ただただ回復を待ちました。
すると…
お前か。
続いて、夫が感染。急ぎ、別室に隔離。
普段は熱も出さず、インフルエンザにかかってもケロッとしている夫(ある意味一番厄介)が真っ青な顔でトイレと布団を往復しています。
そしてついには眠っている間に布団を汚し、この世の終わりのような顔で、呆然と座り込んでいました。
これはいかん。
時間の問題だ。
私は、眠る息子をトイレから出てこない夫に託し、ドラッグストアへダッシュ。
大量の経口補水液とゼリー飲料、次亜塩素酸水スプレー、そしてペットシーツを購入しました。
そして、夫がトイレを使うたびにドアノブも便座もスプレーし拭き掃除。
夫の布団にも、むしろ夫にもスプレー。夫には二度と布団を汚さないようにと、ペットシーツもプレゼントしました。
きっと私も感染してしまう…
でもどうか、お前だけは元気でいてね…。
毎日、ゾンビ映画の主人公のような気持ちで、すやすやと眠る息子の寝顔をみつめていました。
数日経ち、娘はすっかり元気を取り戻していました。
そして夫も、下痢嘔吐は続くものの食欲を取り戻し、少し回復したようでした。
しかし、それが問題でした。
元々、家でじっとしているのが苦手な夫。しかし、まだ症状は完全に治まっていないため、
まだ余裕でウイルスをまき散らすリスクはあります。
貴様それでも医療職か?
怒りを必死に抑えながら、なんとか夫の外出を制止。
ですが、それだけではありませんでした。
何故か布団のある自室に行こうとせず、子供たちと私のいるリビングでくつろいでいる夫。
咳も出ているし、十分ウイルスをまとっている状態であるのは想像できます。
更には、べたべたと私たちに接触してくる夫。
私たちにもうつすつもりなのかと、ここでついに怒りをあらわにしたところ…
『だって、寂しいんだもん』
は????
それで息子が感染して、命を落とすようなことになったらどうする?
私が感染したとして、生活はどうする?買い物は誰がいく?息子の世話は?
この時は正直、子供を連れて家を出ていこうかと思いました。
そして、ついに…
私も感染。
こみ上げる吐き気、止まらない水下痢。私の場合は高熱もひどく、ですが子供を託すことも出来ず、息子の隣で横になりながら、名も知らぬ神に必死に語りかけていました。
すると…
早朝に発症して半日、夕方には症状が治まり、奇跡の復活。
この時ばかりは、すべての神に感謝しました。
そして、その後は息子が発症することもなく、
たくさんの爪痕を残して、我が家の感染性胃腸炎の嵐は、過ぎ去ってゆきました…。
この時の、子供たちを守ってみせるという情熱と、夫の子供じみた言動への怒りは、
今も昨日のことのように思い出せます。
不幸にも産後クライシス真っ只中だったので、夫を車に積んで義実家に置いてこようかと本気で思っていました。
ですが、それから一年経ち…
先日、私が倒れ、誰にも頼ることが出来なかった時。
夫は仕事に家事に育児に、全力で取り組んでくれました。
哺乳瓶も洗えるようになりました。お風呂も一人で入れられるようになりました。
夜泣きにも目を覚まして、息子を抱っこして別室まで連れて行くという気遣いも見せてくれるようになりました。
焼きそば以外にも、相変わらず焼くオンリーですが、料理できるようになりました。
一年経つと、変わるものですね。これなら私も、安心してゾンビになれそうです。
ちなみに、この時初めて買ったペットシーツは、現在もオムツ替えの際に大活躍しています。
著者:たんこ
年齢:31歳
子どもの年齢:4歳と0歳
発達ゆっくりさんな娘と能天気な夫と、新たに加わった暴れん坊な息子と暮らす、元ひきこもりの凶暴な大根です。
instagram:@kei_mio
twitter:@mio_tanko
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