妊娠6カ月に「臍帯付着部異常」となって今まで通っていた産婦人科から総合病院へ転院することになったハナウタさん
>ハナウタさんの投稿記事:臍帯付着部異常で不安いっぱいだった妊娠期。無事に生まれたときは全力で安堵! by ハナウタ
上記の記事で出てくる「臍帯付着部異常」というトラブル、初めて聞いたという人も多いのではないでしょうか。そこで産婦人科医で田園調布オリーブレディースクリニック院長の杉山先生に、どんなトラブルなのか、いつ頃、発見されることが多いのか、診断された時はどんなことに気を付けたらいいのかを解説してもらいました。
Q:「臍帯付着部異常」とはどんなトラブルなのでしょうか
A:臍帯は、赤ちゃんとお母さんをつなぐもので、赤ちゃんに酸素や栄養を送る大切な役割を担っています。
ハナウタさんが説明しているように、その臍帯(へその緒)が普通と異なる位置についてしまうトラブルです。
普通は胎盤の中央あたりにつきますが、それが胎盤の端についたり(辺縁付着)、「卵膜付着」といって胎盤ではない卵膜についてしまうものです。
Q:ハナウタさんが「病名を検索し、最悪のケースをみて不安が止まらなくなり…」とありますが、どんな状態になってしまう可能性があるのでしょうか。
A:辺縁付着はあまり大きな問題にはならず、無事に出産するケースがほとんどです。
ただ卵膜付着の場合、おなかの赤ちゃんが成長すると臍帯の血管が圧迫されやすくなるため、発育が遅れる、赤ちゃんの心拍数に異常があらわれる、胎盤の早期剥離、新生児死亡などを引き起こす可能性が高くなります。
また、医師が「このまま胎内で育てるのは危険」と判断して早めに出産させることもあります。
Q:ハナウタさんは妊娠6カ月(妊娠20週~23週)でトラブルがわかりましたが、どのくらいの時期にわかることが多いのでしょうか。
A: 胎盤ができあがるのがおおよそ妊娠16週頃なので、卵膜付着かどうかは、妊娠20週前後の超音波検査などでわかることが多いです。
クリニックによっては妊娠20週頃に胎児スクリーニングを行っており、その際のチェック項目に臍帯付着部異常を入れているところもあります。
ただ後期になると診断するのが難しくなってくるので、「もうすぐ出産」という時期に胎児の心拍数を確認する検査(NST)で異常が出て判明したり、分娩してからわかるケースもしばしばあります。
Q:「卵膜付着の臍帯付着異常」と診断されたら、どんなことに気をつけたらいいでしょうか。
A:陣痛が始まってから子宮口が全開になる「分娩第1期」と、子宮口が全開になり、赤ちゃんを完全に産むまでの「分娩第2期」に胎児心拍数モニタリングで赤ちゃんの心拍数が落ちる傾向にあります。
ハナウタさんの記事のイラストにも描かれていますが、卵膜付着では血管の一部が卵膜にもぐっているため、ちょっとした子宮収縮でも血流が滞りやすくなってしまいます。そのため、陣痛がはじまったら赤ちゃんの心拍数を注意深く確認することがとても大切です。
事前に卵膜付着がわかっている場合は、赤ちゃんの様子に応じて陣痛誘発剤を使って試験分娩をしてみたり、場合によっては始めから帝王切開にすることがあります。
Q:「臍帯付着部異常」の予防法はありますか。また、なりやすい傾向の人はいますか。
A: なりやすい傾向の人というのはなく、誰にでも起こりうる可能性があります。また、予防法もありません。
ただ、診断されても何事もなく出産をされている妊婦さんもいるので、過度に心配せず、リラックスした気持ちで出産に臨みましょう。
そうはいっても心配になってしまいますよね。そんな時は、病院の先生や助産師さんに「卵膜付着なので分娩中に赤ちゃんの心拍数が落ちないか心配です」と、不安に思っていることを話してみましょう。
どんな対策を行ってくれるか聞いておくだけでも気持ちが落ち着くことがあります。
1人で不安な気持ちを抱えるのではなく、素直に話してみてくださいね。
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杉山太朗先生
医学博士。田園調布オリーブレディースクリニック院長。
2001年信州大学卒業後、東海大学医学部付属病院、東海大学医学部専門診療学系産婦人科講師を経て、2017年に田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。やさしい先生のお人柄とわかりやすくソフトな説明に惹かれ、遠方から通う患者さんも多い。4人のお子さまのパパ。
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