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【医師監修】妊娠後期のおなかと胸の間の痛みは「肋間神経痛」なの?原因と予防法が知りたい!

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今回の投稿記事の筆者であるかめかあさんは、妊娠8カ月に入ったあたりからたまに胸とおなかの間が痺れるトラブルに遭遇。

 

最初は痺れだけでしたが、妊娠9カ月の頃には寝ても覚めても痛い時や、ひどい日は思わず涙が出てしまうほどの激痛を感じることもあったそうです…。  

 

 

かめかあさんも自分で調べてみたものの情報が乏しく、さらにしだいに痛みも激しくなってきたため、妊婦健診時に相談したところ「肋間神経痛なのでは」といわれたそうです。

 

この「肋間神経痛」ですが、かめかあさんのように妊婦さんにはしばしばみられるトラブルなのでしょうか。主な症状や病院へ行く場合は何科に行ったらいいか、予防策などについて、産婦人科医として多くの妊婦さんの健康を見守り続ける田園調布オリーブレディースクリニック杉山太朗先生に教えていただきました。

 

Q:肋間神経痛とはどんなトラブルでしょうか。

A:肋骨のまわりに沿って走る神経に痛みが生じるトラブルです

私たちの体は胸から背中あたりまでをぐるんと囲むように左右12本ずつの肋骨で覆われています。その肋骨と肋骨の間には肋間筋とよばれる筋肉があり、その肋間筋にそって走っている神経に痛みを感じるトラブルが「肋間神経痛」です。

 

Q:主にどんな症状があらわれますか。

A:びりっと電気が走ったような痛みと、左右の片側だけ痛むのが特徴です

かめかあさんのようにピリッと電気が走ったような痛みを感じる人が多くみられます。ただ肋間神経痛の痛みは個人差が大きいので、なかにはじくじくしたような痛み、日焼けのようなヒリヒリした痛みなどを感じる人もいるようです。

また、かめかあさんは「胸とおなかの間に痛み」を感じたとありますが、もう少し上の胸からみぞおちあたりなどに痛みを感じる人の方が多い傾向に。そして左右両側ではなく、片側のみ痛みを感じることが多いのも特徴です。

 

Q:肋間神経痛は、かめかあさんのような妊婦さんにはしばしばみられる病気なのでしょうか。原因はどんなことが考えられますか。

A:おなかが大きくなることで肋間神経を刺激することやストレスが主な原因に。

腰痛や恥骨痛ほど多くはありませんが、一定数の妊娠後期の妊婦さんにみられるトラブルです。

妊娠後期になって子宮が大きくになることで、肋間神経を刺激し、痛みを引き起こすことがあります。

また、おなかが大きく膨らむとおなかの内側から圧力がかかり、肋間筋が許容範囲以上に伸ばされます。それによって痛みが出るケースも。

また、かめかあさんは「ズキズキと締め付けられ息もできないような痛み」を感じていますが、おなかが大きくなると横隔膜を圧迫。そうなると腹式呼吸が難しくなり、胸(肋骨)で呼吸するようになります。胸で呼吸すると、そのたびに肋間神経が刺激され、上記のような痛みが生じることがあります。

 

また、出産や出産後の生活に対して不安を感じている、妊娠中の生活に悩みがあるなど、ストレスや忙しさが原因で引き起こされることがあるので、注意しましょう。

 

さらに、妊娠によるカルシウム欠乏で骨密度が低くなり、骨粗しょう症を発症しやすくなります。骨粗しょう症になると骨折を起こしやすくなるため、それが原因で肋間神経痛になってしまうことも。

骨粗しょう症を防ぐには、乳製品や小魚などカルシウムを多く含む食品を積極的に摂ることが大切です。

ちなみに妊娠以外では、胸膜炎や肺炎、椎間板ヘルニア、帯状疱疹などの疾患が原因となって発症する場合があります。

 

Q:肋間神経痛になりやすい妊婦さんのタイプはありますか。

A:ストレスが多い、睡眠不足、長時間パソコンに向かう仕事をしている妊婦さんに多くみられます。

仕事が忙しい、おなかが大きくなったことで思うように睡眠が取れないなど、ストレスが多いとなりやすい傾向にあります。

 

また、長時間パソコンに向かって仕事をしている場合は、肩や背中に筋肉のコリができて、それが肋間神経を起こすケースがあります。

 

もともと背骨の形に異常がみられる「側弯症」の人も肋間神経痛になる可能性が高いので要注意です。

 

Q:本来ならば何科にかかるのがいいのでしょうか。

A:妊婦さんの場合、まずは産婦人科医でOKです。

専門は整形外科になりますが、妊婦さんの場合、かかりつけの産婦人科医に相談してみてください。

 

治療方法としては、本来、肋間神経痛の原因を取り除くことが必要なります。ただ妊婦さんの場合、その原因が「妊娠」なので、とりあえず対症療法として鎮痛剤や湿布が処方されます。

もし専門的な診察が必要と判断された場合は、産婦人科の先生から整形外科を受診するよう促されることもあります。

 

Q:肋間神経痛の予防法がもしあればお教えください。

A:体をあたためて血行を促す、ストレスを上手に発散することで予防できます。

 肋間神経痛を防ぐには、体を冷やさないようにすることが大切です。

体が冷えると血行が悪くなり、筋肉がこわばった状態になるため、肋間神経痛を引き起こしやすくなります。

シャワーでなくおふろにつかるように心がけましょう。湯船につかることで血行が促進。筋肉のこわばりがゆるんで痛みが緩和されます。

また、ストレスが原因になるので、自分なりのストレス発散方法をみつけるようにしましょう。

疲れが溜まるのもよくありません。そのため、しっかり睡眠を摂ってください。

さらに、栄養バランスのいい食事を心がけることも重要。痛みを取り除く効果のある食事はありませんが、一般的に体の老化を促す活性酸素が体内に増えると、痛みを感じやすくなるといわれています。

にんじんやかぼちゃに含まれるβカロテンや、ブロッコリーやパプリカ、いちごに多いビタミンC、ナッツ類やうなぎ、アボガドに多いビタミンEは活性酸素を抑える働きがあるといわれているので、これらの食材を毎日の食生活で上手に取り入れてみるといいでしょう。

肋間神経痛は、人によってかなり痛みの感じ方が異なります。「なんとなく痛いような気がする」程度にしか痛みを感じない人もいれば、かめかあさんのように涙が出るほどの激痛を感じる場合もあります。

自分が「痛くて普段通りに生活するのは難しいな」と感じたり、「痛みの原因がわからなくて不安…」と思ったら、迷わず産婦人科医に聞いてみてくださいね。

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杉山太朗先生
医学博士。田園調布オリーブレディースクリニック院長。
 
2001年信州大学卒業後、東海大学医学部付属病院、東海大学医学部専門診療学系産婦人科講師を経て、2017年に田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。やさしい先生のお人柄とわかりやすくソフトな説明に惹かれ、遠方から通う患者さんも多い。4人のお子さまのパパ。
※プロフィール情報は記事掲載時点の情報です。