生まれてすぐの頃、赤ちゃんの口が小さかったために保護器をつけて授乳していたというリコロコさん。
ある日、赤ちゃんの口に白いカスが!
ママ友に話したところ、「おっぱいのカスだよ。たくさん飲めている証拠だよ」と言われ、リコロコさんも「そっか~たくさん飲めているのね♪」と安心していたそうです。
ところがその後、生後1カ月健診で小児科医から「この白いものは鵞口瘡というカビの一種」と言われ、愕然としたそうです…。
「鵞口瘡」というなにやら小難しい名前のトラブル。聞いたことがある人も少ないのではないでしょうか。
そこで、埼玉医科大学総合医療センター新生児科の教授、加部一彦先生に鵞口瘡とはどんなトラブルか、ママ友が言っていたようなおっぱいカスとの見分け方、ならないようにするための対策法などについてリコロコさんの記事をもとに教えていただきました。
Q:鵞口瘡とはどんなトラブルでしょうか。他の病気やミルクカスなどと見分ける方法はありますか?
A:カンジダというカビの一種が原因で引き起こされる感染症。こすってみるとミルクカスかどうかは見分けがつきます。
鵞口瘡とはカンジダという真菌(「カビ」の一種です)によって引き起こされる感染症です。
鵞口瘡ができている部位は舌の表面、頬の裏側などで、見ためは白く地図のように見えます。
ミルクかすとの見分け方ですが、こすってみてすぐに取れるならようであればミルクかす、取れない場合は鵞口瘡だと考えられます。
ちなみにカンジダによる感染症は、水虫など他にもたくさんあります。
Q:鵞口瘡の原因は体験談によるとカビと書かれていますが、放置しておくと赤ちゃんにどんな影響がありますか?
A:健康な赤ちゃんなら大きな影響はなく、自然に治ることがほとんど。
健康な赤ちゃんに見られる鵞口瘡は、多くの場合、おっぱいの飲みが悪くなる事がある程度で自然に治ってしまう事がほとんどで、特にそれ以上何か問題を引きおこす事はありません。
Q:体験談では使っていた保護器の消毒が不十分だったようで鵞口瘡になったようですが、正しい消毒方法を教えてください。また、リコロコさんのケース以外に、鵞口瘡になる可能性があるのはどんなときでしょうか。
A:保護器は使った後、きれいに洗って消毒液で消毒を。哺乳ビンと人工乳首以外に母乳哺育でも鵞口瘡になる可能性があるので、哺乳前に手で乳首を触るのはNG。
免疫力が未成熟な赤ちゃんが口にする哺乳びんの乳首や、授乳時に使う保護器、おしゃぶりなど赤ちゃんの口に直接入るものは、使った後はきちんと洗うなど、清潔にしておきましょう。
また、リコロコさんのように保護器を使わず、ママのおっぱいから直接飲ませている場合でも鵞口瘡になることがあります。予防するためには、お母さんの乳首を哺乳前に清潔にし、例えばおむつ替えをした手でそのまま授乳させるなど、汚れた手のまま授乳させることがないよう気をつけましょう。
Q:鵞口瘡になりやすいタイプのお子さん、頻発しやすい月齢などがありましたらお教えください。
A:免疫力が未成熟な生後3カ月までの赤ちゃんはなりやすい可能性が。
特になりやすいタイプの赤ちゃんがいるわけではなく、どのお子さんも鵞口瘡になる可能性があります。とりわけ免疫力が未成熟な生後3カ月未満の赤ちゃんはかかりやすい傾向にあるので、注意しましょう。
Q:鵞口瘡にならないようにするための予防法をお教えください。
A:赤ちゃんの口に入るものを清潔に保つ事が一番重要です。
乳首やおしゃぶり、赤ちゃんがよくなめてしまうおもちゃ、スプーンなど、赤ちゃんの口に入るもの、なめやすいものはこまめに洗って、できるだけ清潔を保つようにしてください。
Q:「ひょっとして鵞口瘡かな」と感じたら、小児科の受診で良いでしょうか。また診断された後の治療方法をお教えください
A:普段と様子が変わらなければ受診しなくてもOK。母乳やミルクの飲みが悪い時などは小児科を受診してください。
鵞口瘡になったとしても、ほとんどの場合には、口に入る乳首を清潔にするなどすれば、時間とともに自然に良くなってしまうため、赤ちゃんの様子が普段と変わらず母乳やミルクをよく飲んでいるのであれば心配はありません。なので、それだけで受診する必要はありません。
母乳やミルクののみが悪いなど症状がある場合や、口腔内のあちこちに鵞口瘡が拡がったり、くり返しできる場合などは、抗真菌剤の塗り薬による治療を行う場合もあります。
鵞口瘡は、難しい漢字が並んでいる病気なので、「大変なトラブルなのかな…」と、最初は心配されるママやパパもいますが、健康な赤ちゃんであれば、ほとんどは自然に治るものです。
もし、口の中に白いものを見かけたら、こすってミルクかすか鵞口瘡か確認をし、取れないようならば、普段と変わった様子はないか、体調や母乳やミルクの飲み具合をチェックしてあげてくださいね。
ゼクシィBaby WEB MAGAZINEの記事
加部一彦先生
埼玉医科大学総合医療センター 新生児科 教授
1959年埼玉県生まれ。1984年日本大学医学部卒業後、東京都済生会中央病院小児科、東京女子医科大学病院小児科、愛育病院新生児科部長などを経て現職。生まれてきたばかりの赤ちゃんの命を日々守り続ける傍ら、お世話に悩むママやパパに対して診察時はもちろん、書籍やサイトを通じてわかりやすいアドバイスを行っています。
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