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【医師監修】妊娠中のおりものはどう変化する? どんなおりものなら要注意?

通常の月経周期に合わせて量や状態が変化しているおりものは、妊娠するとホルモンの影響を受けてさらに変化します。ときには感染や病気などトラブルのサインとなることもあるので、日頃からよくその状態を見ておきましょう。

産婦人科専門医

海老根真由美先生

白金高輪 海老根ウィメンズクリニック 院長

産婦人科専門医。埼玉医科大学医学部大学院卒業後、さいたま赤十字病院産婦人科、埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター母体胎児部門病棟医長、同講師等を経て、2013年に白金高輪 海老根ウィメンズクリニックを開設。産婦人科、婦人科、助産師の外来を中心に、小児科や乳腺外科、泌尿器科、内科の診療も行い、女性のライフイベントに合わせた医療を提供している。

おりものは、腟内を健康に保つ重要な存在

腟や子宮に異常があれば、おりものに変化が

おりものとは、腟や子宮頸管から分泌される粘液のこと。腟には善玉菌のラクトバチルス(乳酸桿菌)が常在して腟内を酸性に保っていますが、おりものは便や尿から雑菌が入るのを防ぐなど、腟内を健康に保つ大切な役割を担っているのです。正常なおりものは、色が透明もしくは白っぽく、酸っぱいヨーグルトのようなにおいがします。

腟や子宮の健康バランスが崩れるとおりものの色や性状が変化することも多く、異常を示すバロメーターともいえるので、何かおかしいと思ったら早めに産院で診てもらうようにしましょう。

妊娠すると、おりものはどう変わる?

妊娠すると、おりものは見た目は以前と変わらないものの、エストロゲンの分泌が増えるため、量が増えます。妊娠中は腟の自浄作用が弱まり、感染症にかかりやすいので、通気性のよい素材の下着を着けて清潔を保つように気を付けましょう。おりものの量が増えても、色やにおいが変化したり、かゆみをともなったりしていなければ心配しなくて大丈夫です。

受診が必要なおりものの変化とは

妊娠中は感染から防御する力が落ちやすい

普段はラクトバチルスによって感染から守られている腟や子宮ですが、妊娠中は免疫力が下がりやすく、腟内の善玉菌が複数の悪玉菌によって入れ替わってしまうことがあります。すると、雑菌が赤ちゃんの卵膜について「絨毛膜羊膜炎」という炎症を起こし、破水や切迫早産・流産の原因になったり、菌がある状態でお産をした場合には産道で赤ちゃんが菌に感染したりするリスクも。そこで妊娠初期には、おりものの細菌検査が必ず行われています。普段からおりものの状態を観察し、以下のような状態であれば受診しましょう。

コラム

妊娠中に注意が必要なおりものの状態

・普段より量が多い
・普段より色が濃い
・膿やかたまりが出る
・カッテージチーズのような白いかたまりの状態である
・灰色、あるいは緑色や黄色みを帯びた色をしている
・血液が混じった色や茶色をしている
・いやなにおいがする(生臭い)
・かゆみをともなう

おりものの異常からわかるおもな病気

おりものに上記のような変化が見られた場合、以下の病気が疑われます。

●細菌性腟症…おりものが黄色や緑色、または灰色で、いやなにおいがする場合は、細菌性腟炎の可能性が。ラクトバチルスが優勢の健康な腟の状態が損なわれ、複数の菌が過剰に増殖した病態だと考えられています。腟錠や内服薬で治療します。

●カンジダ腟炎…白く、カッテージチーズのようなかす状のおりものがある、量が多い、かゆみをともなうなどの症状があれば、カンジダ腟炎を疑います。カンジダは腟内の常在菌のひとつですが、妊娠中は増殖しやすく、繰り返すことも。石けんによる腟の洗いすぎはかえってマイナスになるため、控えましょう。産道で赤ちゃんに菌がうつることがあるため、お産の前に治しておきたい腟炎です。

●クラミジア…多くは無症状ですが、おりものが増えることも。流産や早産の原因になることがあったり、産道感染で赤ちゃんが肺炎や結膜炎を起こしたりする可能性があるため、検査で陽性が判明すれば抗生物質を服用して治療します。

●腟トリコモナス症…おりものが濃い黄色や緑色、泡状になるほか、強い悪臭、かゆみや痛みをともないます。トリコモナスという原虫による性感染症で、ラクトバチルスが減少してしまうため腟内の酸性度が上がり、大腸菌や腸球菌が腟内に浸入してしまいます。妊娠中は、腟坐薬で治療します。

出産が迫ると、おりものはさらに変化する

おりものに少量の血が混じる「おしるし」

妊娠後期は子宮口がやわらかくなり、粘り気のあるおりものの量が増えます。これは赤ちゃんが産道を通って生まれてくるときに、おりものが潤滑剤の働きをするためです。

さらにお産が近づくと、子宮の出口(子宮頸管部)の粘り気のあるおりものに、赤ちゃんを包んでいる卵膜が子宮壁から少しはがれたときに起きる出血が少量混ざって排出されます。これが一般的に「おしるし」と呼ばれるもので、出産が近いことを知らせるサインのひとつ。個人差はありますが数日で陣痛が起こり、出産へと進んでいきます。

大至急受診が必要なおりものは?

妊娠後期、おりものが以下のような状態であれば、病院に連絡してすぐに受診しましょう。

●水っぽいおりものがサラサラと流れるように出る…赤ちゃんを包んでいる卵膜が破れ、中の羊水が流れ出る「破水」が起こっている可能性があります。細菌が侵入して感染する恐れがあるので、入浴やシャワーは避け、清潔なナプキンやタオルをあててすぐに受診を。

●サラサラとした出血、痛みが強い…赤ちゃんが生まれる前に胎盤がはがれ、母子共に危険な状態に陥る「常位胎盤早期剥離」や「前置胎盤」など、危険な兆候が疑われます。救急車を呼び、大至急病院へ。

危険な兆候ならすぐ病院へ連絡し、慎重な対応を

出産直前は、一般的に妊婦健診も週に1回行われている時期。通常の「おしるし」であればすぐに陣痛が始まるわけではないので、そのときに報告するか、健診がすんだばかりであれば電話で連絡すれば大丈夫です。ただし破水や出血が見られたときは赤ちゃんを守るためにも適切な処置が必要なため、ただちに病院に連絡して指示をあおぎましょう。

この記事のまとめ

おりものは子宮の状態を示すバロメーター。そのサインをしっかりと受けとめて

腟や子宮を健康な状態に保ち、感染を予防する役割を持つおりもの。妊娠中は量が増えるので清潔を保つように気を付け、日頃からよく観察しましょう。おりものの変化は感染症や病気などの兆候となることもあるため、菌の感染が原因となる早産や、赤ちゃんへの感染を防ぐためにも、気になる状態であれば早めにかかりつけ医に相談してください。

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構成・文/
福永真弓
イラスト/
小波田えま