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【医師監修】妊娠中の「イライラ」は何が原因?どうすれば解消できる?

普段なら気に留めないようなことに過敏になったり、イライラしたり…。妊娠中は、体調不良や不快な症状が重なって、気持ちも揺れやすい時期です。なぜイライラしてしまうのか、気持ちを楽にするにはどうすればいいのかを一緒に考えてみましょう。

監修医師

海老根真由美先生

白金高輪 海老根ウィメンズクリニック 院長

産婦人科専門医。埼玉医科大学医学部大学院卒業後、さいたま赤十字病院産婦人科、埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター母体胎児部門病棟医長、同講師等を経て、2013年に白金高輪 海老根ウィメンズクリニックを開設。産婦人科、婦人科、助産師の外来を中心に、小児科や乳腺外科、泌尿器科、内科の診療も行い、女性のライフイベントに合わせた医療を提供している。

妊娠を機に起こる、心と体の「イライラ」

原因はホルモンバランスの変化や精神的な不安

妊娠中は、妊婦さんの気持ちが不安定になりやすく、意味もなくイライラしがちな時期です。その原因のひとつには、妊娠を維持するために分泌される何種類ものホルモンによりそのバランスが変化することが挙げられます。中でも、月経前症候群(PMS)にも関わりのあるプロゲステロンの増加は、だるさや頭痛、疲れやすさなど不調の症状につながりやすいと言われています。これに加えて、妊娠初期であれば流産の心配や妊娠へのとまどい、後期には出産に対する不安が増して、いつもなら気にならないことにも神経質に。こうした心と体の両方のストレスがイライラを引き起こしているといえます。

イライラの原因を減らし、リラックスを心がけよう

「イライラしている」というと、個人の気分の問題のようにとらえられがちですが、妊娠中のイライラは子宮内の環境にとっては大敵です。ストレスを受けて緊張感が高まると交感神経の働きが優位になり、血管が収縮して血流が悪くなります。一方、妊婦さん自身が快適に気分よく過ごせると副交感神経が優位になり、血流もよくなって、子宮内の赤ちゃんもゆったりできます。妊娠中はストレスとなるものを遠ざけること、あまり必死にならずに自分が楽になるように過ごすこと、リラックスを心がけることはとても大切なのです。

コラム

ストレスをためないために。イライラしたときの気分切り替え法

◯好きな音楽を聴く
◯パパや家族、友人とおしゃべりをする
◯パパにマッサージをしてもらう
◯入浴する
◯ヨガやストレッチをする
◯読書、ドラマを見る、編み物や裁縫をするなど、自分の好きなことに没頭する
◯天気のよい日に散歩する
◯(体調がよければ)ショッピングや美術館などに出かける
◯ひとりで過ごす時間をつくる

精神を安定させる物質「セロトニン」の不足も原因

「セロトニン」が足りていない現代人

また、「イライラ」のもうひとつの原因として、セロトニンの分泌の低下が考えられます。セロトニンは脳内の神経伝達物質のひとつで精神を安定させる働きを担っていますが、不足するとストレスや疲労、イライラ感や攻撃性の高まり、不安やうつなどの精神症状を引き起こすといわれています。さらに現代人にセロトニンが不足しているのは、栄養バランスの偏った食生活が一因だという指摘があります。

セロトニンはどうすれば補える?

セロトニンは、体内では生成されず、食事からしか取ることができないトリプトファンという必須アミノ酸から合成されます。トリプトファンは、牛乳やチーズなどの乳製品、納豆や豆腐、凍り豆腐、きな粉などの大豆製品、卵、豆類などに多く含まれます。さらにセロトニンの合成に不可欠なのがビタミンB6で、かつお、まぐろ※1などの魚介類やレバー※2などの動物性食品、大豆製品に多く含まれています。セロトニンを補うには、これらの食品をバランスよく摂ることがとても大切です。

※1:大型回遊魚のマグロは食物連鎖によって自然界の水銀が濃縮されており、多量に食べると胎児の神経発達に影響する可能性があるといわれています。本マグロ(クロマグロ)メバチマグロは80gを週1回まで、インドマグロは80gを週2回までと、食べる頻度と量に注意してください。

※2:レバーに多く含まれるビタミンAは妊娠初期に過剰摂取すると赤ちゃんに先天異常が起こる可能性があるという報告があります。串焼き1本でも1日の上限量を上回るため、妊娠初期は特に注意してください。

イライラしたら、周りに甘えて自分をラクに

イライラのコントロールは産後にも役立つ

妊娠中、特につわりの時期は、今までの自分なら問題なくやり遂げていたと思える仕事や家事ができなくなったり、今日は体調がいいと思っても急に具合が悪くなったりと、真面目ながんばり屋さんほどイライラしやすい状況に陥りがちです。また、家族のことや仕事のこと、将来のことなど、妊娠にともなって生じる新たな悩みに気持ちが落ち込むことも。そんなとき、自分ひとりで抱え込んでしまうと心身共に疲れてしまいます。パパをはじめとする周りの人に気持ちを打ち明けて頼り、上手に気分転換を図りましょう。自分ばかりに負荷をかけず、周囲に甘えてストレスをコントロールする術は、産後の子育てにもきっと役立ちます。

この記事のまとめ

妊娠してイライラするのは自然なこと。自分なりのコントロール法を見つけて

幸せな妊婦生活を思い描いていたはずが、思い通りに体の動かない自分にも、ダンナの何気ないひと言にも、わかってくれない会社の上司にもイライラ…。そんなときは、おなかで育つ赤ちゃんのことだけを考えてストレスを避け、自分の気持ちがラクになることを大切にして過ごしましょう。キーワードは、「リラックス」「セロトニンを育む食事」「周りに頼る」の3つです。

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構成・文/
福永真弓
イラスト/
小波田えま

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