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【医師監修】切迫早産、どんなことに気をつける? 予防のための基礎知識

妊婦健診で、「切迫早産の傾向がある」と主治医に指摘されて、ドキッとした経験のある人がいるかもしれません。切迫早産とは、早産の危険性が高いと考えられる状態のことです。どうして早産が起こってしまうのか、どんな症状だと受診が必要なのか、気をつけたいことや知っておきたいことをまとめました。

監修医師

林 聡先生

東京マザーズクリニック 院長

産婦人科専門医。広島大学大学院医学系研究科修了後、県立広島病院産科婦人科勤務、フィラデルフィア子ども病院・ペンシルバニア大学胎児診断・胎児治療センター留学、国立成育医療センター周産期診療部胎児診療科医長を経て、2012年東京マザーズクリニックを開院。妊娠中からの母体・赤ちゃんの健康管理、プロフェッショナルチームが支える中での無痛分娩を基本とした安全な分娩の提供、助産師による妊娠中および産後ケアの充実という3つの理念をもとに日々の診療を行っている。

「切迫早産」とはどのような状態を指すの?

「切迫早産」とは、早産の兆候が見られる状態

正期産となる満37週を待たず、妊娠22週0日から妊娠36週6日までの期間に起こる出産を「早産」と呼びます。特に34週未満で生まれた赤ちゃんは、呼吸障害などの合併症の発生率が高く、NICU(新生児集中医療室)への長期入院が必要となるため、1日でも長くおなかの中で赤ちゃんを育て、早産を防ぐことが大切です。

「切迫早産」とは、早産になりかかっている状態のこと。子宮収縮が起こり、子宮口が開くなど、分娩の兆候が見られますが、適切な治療を受け、安静にして過ごせば赤ちゃんをおなかの中で育て続けることができます。

なぜ、切迫早産や早産が起こってしまうの?

切迫早産や早産の原因は下記の通りさまざまですが、中でも気をつけたいのが感染です。腟から細菌が入り、赤ちゃんや羊水を包む卵膜まで達すると「絨毛膜羊膜炎」を起こし、子宮を収縮させたり頸管をやわらかくしたりして早産を引き起こすもので、早産の原因として最も多くなっています。子宮への感染は、コンドームを使わない性交渉のほか、風邪などのウイルス感染、膀胱炎や歯肉炎などの炎症など原因は多岐にわたります。また、ストレスや過労、睡眠不足で抵抗力が落ちた状態は、感染を引き起こしやすいので注意が必要です。

コラム

早産の主な原因(もしくはリスクとなるもの)

・絨毛膜羊膜炎
・子宮頸管無力症(子宮頸管が開きやすい)
・子宮頸部円錐切除術の治療を受けた
・多胎妊娠
・羊水過多症
・母体の合併症(子宮筋腫、前期破水、妊娠高血圧症候群、常位胎盤早期剥離、前置胎盤ほか)
・胎児の合併症(胎児発育不全、胎児機能不全)
・生活習慣(やせ、喫煙、歯周病、重労働、ストレス)

妊婦さんが気をつけることで防げる早産も

感染以外の原因には、妊婦さんの体質や既往症、生活習慣が影響することもあります。「過去に円錐切除術を受けた」「双子を妊娠している」「やせぎみ」など、当てはまるものがある場合や、主治医から「早産の傾向がある」と指摘された場合は、妊婦さん自身が日頃から意識して、妊娠期間中なるべく無理をしないように過ごすことが大切です。過労やストレスも早産の原因になるので、疲れをためず睡眠や休養を十分にとり、ストレスとなることを遠ざけ、気持ちを楽にして過ごすようにしましょう。

どんな症状があれば受診するべき?

気になる兆候があれば、すぐに受診を

早産を防ぐには何よりも早期発見が重要です。普段と何か違うな、といった以下のような症状があれば、躊躇せずに診察を受けましょう。特におなかの張りや痛みには注意し、例えば1時間に4~5回というように周期的に痛くなるようなことがあれば受診を。また、早産の兆候を見逃さないためにも、妊婦健診は毎回必ず受けましょう。

コラム

こんな症状は、切迫早産のサイン

□ 出血がある
□ 継続的なおなかの張りや痛みがある
□ おなかの張りが体を横たえても収まらず、規則的に張る。あるいは張りが強くなる
□ おりものが多い、かゆみがある
□ 水っぽいおりものが続く
□ 黄色や茶色のおりものが出る
(粘りけのあるおりものや、血液の混じったおりものが増える)

切迫早産と診断されたらどうなるの?

切迫早産で安静を言いわたされた場合は、医師の指示に従いましょう。症状の重さにもよりますが、原則的に仕事は休み、家事もできるだけ控えて体を横たえて過ごします。軽い場合は通院治療ですが、子宮収縮が強く、子宮口が開いてきている場合は、入院して子宮収縮抑制剤の点滴治療を受けます。

妊娠が続行できるように自宅安静や入院で治療

入院は長期になる場合もあり、妊婦さんにとってはつらく、不安な気持ちで過ごすこともあるでしょう。しかし37週を迎えるまでの間は、お母さんの子宮が赤ちゃんにとって最適の環境であり、おなかの中にいる1日は大人の何カ月分にも相当するほど赤ちゃんの成長にとって意味のあるものです。避けられない早産もありますが、気をつけることによって予防できることもあるので、赤ちゃんのためにがんばりましょう。

この記事のまとめ

1日でも長く、赤ちゃんをおなかで育てるために

妊娠37週より前に出産の兆しがみられ、早産の危険性が高い状態を「切迫早産」といいます。早めに兆候が見つかることで、早産を防ぐことができる可能性もあるので、妊婦健診は必ず受けましょう。また、普段からおなかの張りや下腹部痛には気をつけて、いつもと違う症状があればすぐに病院で診察を受けましょう。

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構成・文/
福永真弓
イラスト/
小波田えま

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