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【医師監修】妊娠中の仕事、今までと同じ働き方で大丈夫?

妊娠中も仕事を辞めずに続ける妊婦さんが増えています。そんななか、妊娠中も妊娠前と同じように働き続けられるか、体調がつらいときの仕事はどうしたらいいのか悩む人も多いでしょう。妊娠と仕事の両立について考えるとき、知っておきたいことについて詳しく解説します。

監修医師

宗田 聡先生

広尾レディース院長
茨城県立医療大学客員教授

医学博士。日本産科婦人科学会認定医・指導医。臨床遺伝学認定医・指導医。筑波大学卒業後、筑波大学講師として臨床・研究・教育に従事。その後、米国ニューイングランドメディカルセンター(NEMC)遺伝医学特別研究員、茨城県周産期センター長(筑波大学産婦人科臨床准教授兼任)などを経て、2012年より広尾レディース院長。東京慈恵会医科大学非常勤講師、筑波大大学院非常勤講師などもつとめる。

仕事によるストレスや疲労の蓄積には注意を

妊娠中の体に負担のかからない働き方で

近年では女性の就業率が上昇して産休・育休制度の整備も進んだことから、妊娠中でも仕事を続ける人がとても増えています。特にハードな仕事をこなしてきた人などはこれまでと同じ働き方でも大丈夫なのか不安になる人もいるでしょう。おなかに赤ちゃんがいるという大事な体ですし体調にも波があり、良いときもあれば悪くなるときもあります。周囲の協力を得ながら負担のかからない働き方をすることがとても大切です。

危険な作業はできるだけ避けて

まず業務内容に転倒や事故による外傷(けが)の危険がある仕事は必ず避けましょう。事業主には妊娠中の女性を危険な業務に就かせることは法律で禁じられていますので、業務の転換などの措置をお願いすることができます。

一方この職種だから、この業務だから流産率や早産率が上がるという明確な統計学的処理が施されたデータはありません。続けても良い、悪いを絶対的に言い切れるわけでもないのです。

疲労に要注意

つわりがひどい、出血している、おなかが張っているというときは当然休むべきなのですが、それ以外にも妊婦さんが働く際のモノサシとして大切にすべきは、ストレスや慢性的な疲労の蓄積です。日々仕事をしていれば一時的なストレスや疲労は誰もが感じるでしょう。しかし問題はそれが慢性的で継続的であり、必要以上に自分が追い込まれるようなもの。妊娠中に業務内容の見直しをしないまま継続するのはあまりおすすめできません。

体に負担がかかる仕事は改善を要求しよう

働く妊婦はさまざまな法律に守られている

現在は、働く妊婦さんを守るための法整備が以前に比べてかなり進みました。例えば、妊婦さんにさせて良い作業は範囲が制限されており、以下のような負担の大きい仕事は、座ってできる仕事やデスクワーク、負荷の軽い作業に転換してもらうことができます。

コラム

負担の大きい仕事の例

1.重量物を取り扱う作業
 継続作業6~8㎏以上
 断続作業10㎏以上
2.外勤等連続的歩行を強制される作業
3.常時、全身の運動を伴う作業
4.頻繁に階段の昇降を伴う作業
5.腹部を圧迫するなど不自然な姿勢を強制される作業
6.全身の振動を伴う作業 等
【出典/厚生労働省委託 母性健康管理サイト「妊娠・出産をサポートする女性にやさしい職場づくりナビ」より一部改変】

体調に影響のない軽易な業務に転換を

こうした「負担の大きい仕事」はあくまで一例であり、ここに該当しなくても妊婦さんには労働基準法における母性保護規定により「妊婦の軽易業務転換」(労働基準法第65条第3項)が認められています。これは妊婦さん自身が請求すれば、ほかの軽易な業務に変えてもらうことができるという法律です。前述のようにストレスや慢性的な疲労が蓄積している状態の人は、妊娠中の体に対してキャパシティーを超えた業務が課されている可能性が高いでしょう。上司に今よりも軽易な業務の転換をお願いしてみることをおすすめします。また、妊娠中の体調は良いときもあれば悪いときもあります。いざ休みたいときには休めるという労働環境も大切です。

交渉するときには働き続ける姿勢も大事

周囲に迷惑をかけたくないという気持ちから言い出しにくい人もいますが、おなかの赤ちゃんのためにも、お願いすべきことはしっかりお願いしましょう。軽易な業務への転換をお願いするときに気を付けたいのは今後の職場での人間関係や、産休・育休後の復帰までを見据えたうえで、自分にはずっとこの仕事を続けて戦力として貢献したい意思があるが、無事に妊娠・出産できるよう今は力を貸してほしいという姿勢です。また、協力してくれる上司、周囲の同僚には常に感謝の気持ちを忘れないようにしましょう。

必要に応じて「母健連絡カード」を活用

医師が事業主に必要な措置を伝えるカード

例えば上司との交渉が苦手で言い出しにくい場合は主治医に相談して、事業主が必要に応じた措置をとってもらうための「母性健康管理指導事項連絡カード」を活用しましょう。母子健康手帳にも記載されています。

制度をうまく利用して柔軟な働き方を

現在では、働く妊婦さんはいくつもの法律に守られ、制度上では、妊娠・出産を最優先としたうえでの就業ができるようになっています。つまりつらい体調、危険な業務、負担の重い作業内容での就業をする必要はないので必要な療養期間をとる、作業を制限してもらうなどの措置を講じてもらうようにしましょう。もしも体調が悪いのに無理をして早産などになってしまった場合、気落ちして今後の就労にも意欲がわかず結果的に職場を離れる、といったケースもあります。今後を見据えたうえでも妊娠中の今だけは無理をせず体を大切にして、無事に出産に至ることができるよう働き方には十分に気を付けていきましょう。

コラム

もしも勤め先が納得してくれなかったら…

妊娠・出産・育児そのものやそれらに関する各種制度を利用したことを理由に、事業主が行う解雇、減給、降格、不利益な配置転換、契約を更新しないことを「不利益取扱い」といいます。万が一不当な扱いを受けた場合は会社の人事労務などの相談担当者や労働組合に相談してみましょう。社内に該当部署などがなければ都道府県の労働局などの外部機関にもぜひ相談を。

この記事のまとめ

妊娠・出産を最優先にできる働き方をしよう

妊娠中は体調に応じた無理のない働き方をしていくことが大切です。ケガの可能性がある業務をのぞけば特にやってはいけない仕事はありませんが、慢性的な疲労やストレスが蓄積する仕事は妊娠中には不向きなので業務の軽減や転換をお願いしましょう。妊婦さんはさまざまな法律に守られており、つらい体調のまま働く必要はありません。必要に応じて産科の主治医に記入してもらう「母健連絡カード」の活用も進められています。

構成・文/
秋田恭子
イラスト/
山村真代