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【医師監修】妊娠初期の流産「早期流産」はママのせいではありません

流産が起こるのは、妊娠全体の約15%で、うち8割以上が妊娠初期に起こるそうです。初期に流産が起こる理由は?どんな人がなりやすいなどの傾向はあるのでしょうか? 産婦人科医の竹内正人先生に伺いました。

産婦人科医

竹内正人先生

日本医科大学卒業、米国ロマリンダ大学、日本医科大学大学院を経て、葛飾赤十字病院に勤務。東峯婦人クリニック副院長を経て現在はフリーに。著書に『はじめてママの「からだとこころの悩み」お助けBOOK』など。

妊娠初期(12週未満)に起こりやすい早期流産

早期流産とは?

「流産」とは、妊娠はしたけれど、赤ちゃんがうまく育たないなどで、早い段階で赤ちゃんが亡くなってしまうことをいいます。妊娠22週までに起こることを「流産」、それ以降になると「早産」といいます。そのうち、妊娠12週未満に起こる「流産」を、「早期流産」といいます。

妊娠した人の6~7人に1人は起こる

妊娠12週未満に起こる「早期流産」は、全流産数の8割以上を占めるといわれます。妊娠判明の時期は人により、なかには妊娠に気づかずに流産するケースもあるので、正確な数や割合は出ませんが、妊娠5週くらいで胎嚢は見えたのに、その後に流産するケースは全体の約15%です。そのうち、胎嚢は見えたけど次の健診で心拍が確認できないケースが10%くらい、心拍確認後の流産は5%くらい。そのうち妊娠12週を過ぎた後の流産は1~2%になります。

妊娠超初期に起こる「生化学的妊娠(化学流産)」

妊娠を待望する人の中には、排卵日から計算して早めに妊娠検査薬を使う人もいます。妊娠検査薬は受精卵が着床してhCGというホルモンがある程度分泌されるようになると陽性を示しますが、臨床的に妊娠と診断できる胎嚢が見える前に受精卵の発育が止まることがあります。そんな超初期に起こる流産を「生化学的妊娠(化学流産)」といいますが、その数は流産の数にはカウントされていません。生理が遅れてきたのが実は生化学的妊娠だった可能性もあり、気づかないケースも多いです。

コラム

「流産」と「切迫流産」は何が違うの?

「流産」と「切迫流産」は全然違います。「流産」は残念ながら、赤ちゃんがすでに亡くなっていますが、「切迫流産」は赤ちゃんの心拍は確認できているけど、何らかの原因で一時的に出血しているような状態をいいます。つまり「切迫流産」とは、流産の危険がある状態ですが、「切迫流産」になったら「流産」になるわけではありません。無理は禁物ですが、心拍が確認されていれば、その多くはその後に落ち着いていきます。

早期流産が起こる原因

ほとんどが赤ちゃんの染色体異常

「早期流産」は、ほとんどが赤ちゃん側の理由で起こります。ママ側の子宮環境などが原因であることは多くはありません。赤ちゃん側の理由とは、受精卵の染色体異常や遺伝子異常などで、受精卵がうまく育つことができないときに起こります。卵子の異常、精子の異常、受精のタイミングでの異常など、いろいろな要因が考えられますが、いずれも受精の段階で命の長さは決まっていて、早い段階で「流産」してしまいます。

心拍確認後であっても理由は同じ

胎嚢や心拍を確認する前ならまだしも、心拍を確認し、妊娠確定といわれた後に流産すると、「もう少し早く受診をしていたら」「仕事を休んで安静にしていたら」などと、自分の行動を省みることがあるかもしれません。しかし、前述したように妊娠初期の12週未満の「早期流産」は心拍確認後にも起こりうることです。そして、その原因の多くは染色体異常など、赤ちゃん側の理由によります。

コラム

薬やたばこ、アルコールで流産する?

まったく影響がないとは言い切れませんが、妊娠に気づく前のものは、ほとんどのケースでまず影響はありません。たばこもアルコールも依存症というほど量が多い場合は、卵子や精子の質に影響するかもしれませんが、だから流産するとも言い切れません。妊娠を意識したら控える、または妊娠がわかったら控えるようにすれば大丈夫でしょう。薬もごく一部の特殊な薬は影響が心配されますが、風邪薬や抗生物質などはまず問題ありません。心配な場合は、かかりつけ医にお薬手帳を見せるか市販薬の薬名を伝えて確認してください。

早期流産は防げるの?

ほとんどは防げない自然界のできごと

残酷な言い方になるかもしれませんが、「早期流産」のほとんどはどうしようもないこと。ママが何かを「したから」、逆に何かを「しなかったから」防げるというものではありません。例えば、安静にしていたら防げるとか、栄養をしっかりとったら防げるというものではないということ。だから、どうぞ自分を責めないでくださいね。ただし、流産を繰り返すときは不育症の治療で防げることもあるので、かかりつけ医に相談してください。

年齢は影響するが、誰しも起こること

受精卵の異常ということは、卵子年齢や精子の質が少なからず影響してきます。高齢になるにつれ、妊娠率は下がり流産率は高くなりますが、若ければ大丈夫というわけではなく、あくまで確率の問題です。妊娠前のブライダルチェックでも、「流産」しやすいかどうかはわかりません。もし子宮の奇形や血液凝固障害などの問題がわかっても、それが理由で妊娠ができないわけではありません。赤ちゃんの生命力は、医学の力だけでは説明できないこともたくさんあります。

この記事のまとめ

夫婦でしっかり受け止め次の妊娠へ

「早期流産」は残念なことではありますが、生物学的にはどうしようもないことがほとんどです。高齢になると流産率は高くなりますが、ちゃんと妊娠して生まれる確率の方がずっと高いわけで、「高齢だからどうしよう」と気にしすぎないでください。もし、育つことができなかったときは、夫婦できちんとお別れをして、また次の妊娠へ向かって、ふたりの時間を大切にしてください。

構成・文/
江頭恵子
イラスト/
いしいゆき

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