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【医師監修】妊娠中の「頻尿」はなぜ起こる? 注意するべきことは?

さっきも行ったのにまたトイレに行きたくなる、夜中に何度もトイレで目が覚める…。 妊娠中の頻尿は、正常の妊娠でも約60%と多くの妊婦さんが経験する症状のひとつです。心配のいらない生理的なものですが、中には膀胱炎や腎盂腎炎などのトラブルにつながるものもあります。妊娠中はなぜ頻尿になりやすいのか、そのしくみと注意したい症状についてお伝えします。

監修医師

村田雄二先生

大阪大学医学部名誉教授。
ベルランド総合病院 周産期医療研究所 所長・医学教育センター長。産婦人科専門医。米国産婦人科専門医。米国周産期医学専門医。

大阪大学医学部卒業後、南カリフォルニア大学医学部産婦人科准教授、カリフォルニア大学アーバイン校医学部産婦人科准教授を経て1986年カリフォルニア大学アーバイン校医学部産婦人科教授に就任。1996年大阪大学医学部産婦人科学教室教授、2002年大阪大学医学部附属病院副院長を経て、2006年同大学名誉教授。日米で産科医療の臨床研究と若手医師の育成に長年携わり、次世代のリーダーとなる人材を多く輩出。2009年より現在の病院にて、日本国内、特に大阪における産婦人科医療体制の整備・充実に尽力している。

妊娠中の頻尿は、どうして起きる?

循環する血液が増えて、尿も増えるから

妊娠すると、尿を作り出して体外に排出する器官である泌尿器も影響を受けて頻尿になりやすくなります。

頻尿になるひとつ目の原因は、妊娠中は胎児を育てるために体を循環する血液量が増えること。腎臓には血液をろ過して老廃物や毒素を取り除き、余分な水分と一緒に尿として排出する働きがあります。妊娠によって循環する血液(特に液体成分である血しょう)が増えると腎臓がろ過する血液量も増え、作られる尿の量が増加して尿は排出されやすくなります。

大きくなる子宮に膀胱が圧迫されることも原因

さらに二つ目の理由は、妊娠が進んで子宮が大きくなると、膀胱が圧迫されてその容量が小さくなること。普段より早く膀胱がいっぱいになるように感じて頻尿になりがちです。尿意を感じたら我慢せずにトイレに行くようにしましょう。

これらの変化は生理学的なもので、頻尿になることも異常ではありません。妊娠中は多くの水分が必要なため脱水になりやすく、頻尿を恐れてトイレの回数を減らそうと水分を控えることはかえってNGです。こまめな水分補給は欠かさないよう、そしてトイレに行きたくなったら我慢せずにその都度行くことを心がけましょう。

注意するべき頻尿の症状とは?

「尿路感染症」が原因となる頻尿に注意

妊娠中の頻尿の症状で注意したいのが、膀胱炎や腎盂腎炎といった「尿路感染症」によるものです。これは、妊娠するとプロゲステロン(黄体ホルモン)の影響で、尿路(尿管・膀胱・尿道)の平滑筋がゆるむことや、大きくなった子宮が尿路を圧迫することから、尿のうっ滞(流れが悪くたまること)や逆流が起こりやすくなることが原因です。尿がうまく排出されないと膀胱の中に細菌が繁殖しやすくなり、膀胱炎や腎盂腎炎といった尿路感染症にかかりやすくなります。

コラム

妊娠中気を付けたい2つの「尿路感染症」

(1)膀胱炎
妊娠によって尿の流れが悪くなっていたり、体の抵抗力が低下していたりすると、肛門のまわりにいる大腸菌などの原因菌が尿道から膀胱に侵入し、膀胱炎を発症しやすくなります。もともと女性は尿道と肛門・性器が近く、男性よりも膀胱炎になりやすい傾向があるほか、トイレに行くのを長時間我慢することも発症のリスクを高めます。

(2)腎盂腎炎
腎盂とは腎臓の中で尿をためておく部分のことで、膀胱の中の細菌が尿管をさかのぼって腎盂にまで到達し、炎症を起こす病気を腎盂腎炎といいます。多くの場合は膀胱炎の悪化が原因です。腎盂腎炎は、病気を繰り返すことがあるほか、切迫早産を引き起こすリスクもあるため、まずはしっかりと治療することが必要です。

「尿路感染症」が原因となる、受診が必要な頻尿の見分け方

膀胱炎のおもな症状として、頻繁に起こる尿意のほか、排尿時のしみるような痛み、排尿後にも尿が膀胱の中に残った感じ(残尿感)、尿に血が混じる、尿が濁る、などがあります。さらに、高熱やだるさが続く、背中や腰に痛みがあるなどの症状は、膀胱炎よりも重い腎盂腎炎の症状の可能性も考えられます。これらの症状が現れたら必ず産婦人科を受診して尿路感染症の検査を受けましょう。どちらの病気も早急に治療することが大切です。

「尿路感染症」はどのように予防する?

膀胱に細菌が入ることを予防するには、水分をよく取って、排尿を我慢せずにこまめにトイレに行く習慣をつけましょう。これによって尿道に入り込んだ細菌は尿で流され、膀胱にも細菌が繁殖しにくくなります。また、排便後は前から後ろに拭いて大腸菌が尿道に侵入しないように気を付けるほか、入浴やシャワーで局所を清潔に保ちましょう。また、疲れすぎないように休息をたっぷりとることも大切です。

この記事のまとめ

「膀胱炎かな?」と思ったら早急に受診を

妊婦さんが経験する頻尿は、多くの場合は妊娠による生理的な変化によるものです。しかし頻尿以外にも、排尿痛や残尿感がある、尿が濁る、血が混じるなどの症状があった場合は膀胱炎の疑いがあるため、すぐに病院で診察を受けましょう。膀胱炎だけでは発熱があることは稀ですが、進行すると早産や流産のリスクのある腎盂腎炎につながることもあるため、放置せずに早急に治療することが何よりも大切です。

構成・文/
福永真弓
イラスト/
小波田えま