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【医師監修】妊婦はインフルエンザの予防接種はして平気?

「妊婦さんもインフルエンザの予防接種をしましょう」と推奨される文章をあちこちで見て、妊娠中にインフルエンザワクチンを接種しても本当にいいの?と不安に思う人も多いでしょう。そもそも妊婦がインフルエンザにかかったらどうなるのか、また、ワクチンは影響がないのかなどを詳しく解説します。

医学博士

宗田 聡先生

広尾レディース院長
茨城県立医療大学客員教授

医学博士。日本産科婦人科学会認定医・指導医。臨床遺伝学認定医・指導医。筑波大学卒業後、筑波大学講師として臨床・研究・教育に従事。その後、米国ニューイングランドメディカルセンター(NEMC)遺伝医学特別研究員、茨城県周産期センター長(筑波大学産婦人科臨床准教授兼任)などを経て、2012年より広尾レディース院長。東京慈恵会医科大学非常勤講師、筑波大大学院非常勤講師などもつとめる。

妊婦のインフルエンザは重症化の可能性が

妊婦はインフルエンザにかかると重症化する?

インフルエンザにかかると、突然の38度以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身の強い倦怠感などの症状が現れます。妊娠中は免疫寛容と言って、自分以外の体であるおなかの赤ちゃんを受け入れるために妊娠前よりも免疫力が落ちています。こうしたことから、病気にかかりやすく、かかったときに重症化しやすい、とされています。

インフルエンザの重症化ってどういうこと?

インフルエンザの重症化とは、咳などの呼吸器症状が悪化して肺炎を合併し、血液を流れる酸素が不足して、人工呼吸器が必要となるような状態を指します。妊婦さんが呼吸不全を起こすと胎盤を介して赤ちゃんに運ばれる酸素量にも影響が出るため、これをきっかけにして流産・早産が起こってしまう可能性があります。また、赤ちゃんは一般的に高温の環境に弱く、高熱が続くと流産・早産のリスクが上がります。

妊娠中のワクチン接種OK。夫と一緒に予防を

不活化ワクチンで病原性を排除

インフルエンザワクチンは、「不活化ワクチン」と言って、ウイルスの病原性をなくして作られていることもあり、胎児に害を及ぼしたという報告はありません。また、初期・中期・後期のいつでも接種が可能です。

また、妊婦のワクチン接種によって母体の免疫が胎盤を介して胎児に移行し感染防御を与えることが期待されています。

インフルエンザにかかってしまった場合の重症化リスクをさけるためにも、妊婦さんへのインフルエンザの予防接種は推奨されています。

ワクチン接種は夫など家族全員一緒に

一般的にワクチンの予防効果は100%ではなく、残念ながら予防接種をしていてもかかってしまうことがあります。しかしワクチン接種をしているほうが、全く何もしていないよりも重症化を防ぐ効果があり、回復が早いことが知られています。

また、インフルエンザの予防接種は妊婦さん本人だけでなく、夫や、他に同居している家族がいれば全員が行うことが大切になります。ワクチン接種のみでは万全でないなかで、大切なのが、家庭内にインフルエンザウイルスを持ち込まないことです。

突然の高熱!だるさ!それでもかかってしまったら…

病院に電話をして指示を仰ぐ

まずは、発熱などの症状が出た時間を記録して、主治医のいる産院へ電話をして指示をあおぎます。多くの場合、合併症などがない場合は、他の妊婦さんへの感染を避ける目的で、内科などインフルエンザ治療が可能な病院を紹介されます。

抗インフルエンザ薬を使用するかどうかは判断の分かれ目

受診する病院を指示されたら、あらかじめ電話をして、マスク着用のうえ受診します。

受診してインフルエンザであると診断されたら、タミフル® 、リレンザ®、イナビル®といった抗インフルエンザ薬の使用を検討することとなりますが、いずれの薬もまだ歴史が新しく、妊娠や胎児への安全性が確立されているわけではありません。そして、使用したとしても実際に症状が収束するまでの日数が1日前後早まる程度である、とされます。

その一方で、これまで毎年日本で何例もの妊婦さんに投与され、関連が疑われた先天性疾患などの報告はありません。こうした状況から、実際に薬を使用するかどうかは、症状などを考慮して医師の判断が分かれるところです。

インフルエンザには季節性があり、基本的には寒いシーズンが流行期です。事前に予防接種を行い、住んでいる自治体の情報発信に気を付けて、流行期が始まったら人ごみを避けるなどの対策をして予防しましょう。

この記事のまとめ

妊婦でもインフルエンザの予防接種は可能

インフルエンザについては、妊婦さんはシーズン前となる秋のはじめに予防接種を行って、かからないように努めるのが最も大切です。しかし予防接種をしていても、かかることはあります。もしもかかったかな?と思ったら、いきなり病院にかけこむのはNG。まずは電話をして、受診先や受診の方法について指示を仰ぐようにしましょう。

構成・文/
秋田恭子
イラスト/
山村真代