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【医師監修】「つわり」はなぜ起こるの?どう対処すればいい?

妊娠が判明して間もなくの頃から、吐き気や嘔吐をはじめとしてさまざまな症状が現れるつわり。個人差が大きく、日によって体調も違うため、「何を食べたらいいの?」「どうやって対処したらいい?」と悩む人がほとんどです。つわりについて知り、この時期をどう過ごせばいいのか考えてみましょう。

産婦人科専門医

海老根真由美先生

白金高輪 海老根ウィメンズクリニック 院長

産婦人科専門医。埼玉医科大学医学部大学院卒業後、さいたま赤十字病院産婦人科、埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター母体胎児部門病棟医長、同講師等を経て、2013年に白金高輪 海老根ウィメンズクリニックを開設。産婦人科、婦人科、助産師の外来を中心に、小児科や乳腺外科、泌尿器科、内科の診療も行い、女性のライフイベントに合わせた医療を提供している。

つわりはなぜ起こる?どんな症状があるの?

つわりの原因は、まだ解明されていない

つわりは、50~80%の妊婦さんが経験し、特に初産婦に多いといわれています。 つわりがどうして起こるのか、ということは実はよくわかっていません。代表的な説は、妊娠すると分泌されるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)というホルモンが関わっているというもの。つわりは妊娠5~6週頃から始まり、ピークは10~12週で、胎盤が完成する16週頃までには治まることが多いですが、hCG分泌の動きもこれによく似ているのです。また、妊娠にともなう精神的な変化やストレス、栄養不足でつわりが重くなるケースもあります。

「hCGの変化」

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みんなが悩むつわりの症状は何?

つわりの症状には、代表的なものとして吐き気や嘔吐があり、特に空腹時は症状が強くなります。胃もたれや胸やけ、食欲がない、食べていないと気持ちが悪い(食べづわり)などの消化器系の症状を中心に、においに敏感になる、食べ物の好みが変わる、唾液が多く止まらない、全身がだるくて眠い、頭痛やめまいがするなどさまざまな症状があり、それが重なって現れることも。症状の重さやいつまで続くかは個人差も大きくなっています。

こんな症状は要注意。つわりで受診する目安

つわりが続いても何とか飲食ができていれば問題はありません。しかし、つわりが重症化して吐き気や嘔吐が続き、食べ物や水を受けつけないような場合は、体が衰弱して日常生活に支障をきたす「妊娠悪阻」の可能性があります。妊娠悪阻には、胎盤の深刻な病気などが原因になっていることがあるほか、ヴェルニッケ脳症というビタミンB1欠乏症になって後遺症が残ることもあるため、注意が必要です。下のいずれかの症状が当てはまるようであれば、早めに受診して治療してもらうようにしましょう。

コラム

こんなつわりは受診が必要です

・体重が妊娠前の5%以上減った
・一日中何度も吐いている
・水分でさえ取れない。尿がほとんど出ない
・めまいや嘔吐で起きられず、日常生活が送れない

つわり期の食事は、「食べたいものを食べたいだけ」が正解

食事は、食べられるものを少量ずつ分けて

吐き気がしたり、食べ物のにおいや味がだめだったり、つわりの時期に苦労するのが食事のこと。日によって、時間によって食べられるものが違うこともあり、「これなら食べられそう」と家族に頼んで買ってきてもらったものが一口も食べられず、ケンカになる人もいるほどです。この時期は栄養の偏りを気にせず、「食べたいものを食べたいときに、食べたい量だけ食べる」と考えればOK。空腹を避けるために少しずつ回数を増やして食べたり、消化のよいものを食べるなど、胃への負担が軽くなるような食べ方がおすすめです。つわりで十分に食べられなくても、この時期の胎児はまだ小さく、ママの体に備えられた栄養で成長できるので大丈夫です。

コラム

海老根先生がアドバイスする
つわりの時期の食べ方OK or NG

●「小さなおにぎりを作って空腹時に食べる」
→これはOK。あたたかいごはんはにおいがダメな場合も多いので、ごはんは冷まして小さなおにぎりにし、こまめに食べるのがおすすめです。「クッキーがいい」という人もいるけれど、水分不足になることも。適度に水分があり、一気に血糖値が上がらないという点でもおにぎりならぴったり。

●「空腹予防にチョコレートやあめを持ち歩く」
→つわりの乗り越え方としてはOKだけど、このような習慣をずっと続けて妊娠糖尿病になる人が増えています。つわりが落ち着く14~16週頃になったら意識的に甘いものを避け、栄養バランスの取れたものやビタミンを摂取できるものに変えていきましょう。フルーツのとりすぎにも注意。

脱水や便秘を防ぐため、水分補給を心がける

この時期に気を付けたいのがこまめな水分補給。食べる量が減るほか、嘔吐したり、唾液量が増えたりと、妊娠中は水分不足で便秘がちになることがよくあります。お茶や水、スポーツ飲料など飲めるものを少しずつ、ゆっくりと飲むようにしましょう。便秘は1週間近く続くようなことがあれば、かかりつけ医に相談してみてください。

つわりを悪化させないためには、「気持ちを楽に」が大切

今は「がんばらなくていい」と自分に言い聞かせて

つわりの時期、一番避けたいのは「こうしなきゃいけない」を自分に課してしまうこと。仕事で成果をあげることや締め切りを守ること、家でも家事を完璧に行うなど、やらなければいけないことをこの時期には計画せず、気持ちを楽に過ごすことを優先しましょう。真面目な人ほど「これまでならできたのに」と動けない自分を責めたり、イライラしたりしがちですが、今は体を休めるとき。つわりの症状を重くさせないためにも、家族や同僚など周りの人に頼りながらこの数カ月は心身ともに休み休み過ごし、「しなきゃいけない」ということやストレスになる状況を避けるように心がけてください。

つわりは10カ月ずっと続くことはなく、必ず明ける日がやって来るので大丈夫です。

この記事のまとめ

食べられるものを食べて無理は禁物。リラックスした生活を心がけて

つわりは妊娠5~6週頃に始まり、10~12週頃にピークを迎えます。吐き気・嘔吐をはじめとする胃腸症状のほか、さまざまな症状に悩まされますが、この時期は食べられるものだけ食べて水分補給に気を付けていれば、赤ちゃんの発育を心配しなくても大丈夫です。嘔吐を繰り返すなど日常生活に支障をきたす「妊娠悪阻」には注意しましょう。

精神的なストレスがつわりを重くすることもあるため、動けない自分を責めず、ゆったりと過ごしてこの時期を乗りきりましょう。

構成・文/
福永真弓
イラスト/
小波田えま