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【医師監修】妊娠したかも?と思ったら便秘がちに。どうしたら改善する?

妊娠中、いつの時期も悩みの多い便秘。普段から便秘に悩む女性は多いものですが、妊娠中は黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響を受けて消化器官の運動が鈍り、さらに便秘になりやすくなっています。妊娠中、便秘に悩まないようにするにはどうすればよいか、一緒に考えてみましょう。

監修医師

林 聡先生

東京マザーズクリニック 院長

産婦人科専門医。広島大学大学院医学系研究科修了後、県立広島病院産科婦人科勤務、フィラデルフィア子ども病院・ペンシルバニア大学胎児診断・胎児治療センター留学、国立成育医療センター周産期診療部胎児診療科医長を経て、2012年東京マザーズクリニックを開院。妊娠中からの母体・赤ちゃんの健康管理、プロフェッショナルチームが支える中での無痛分娩を基本とした安全な分娩の提供、助産師による妊娠中および産後ケアの充実という3つの理念をもとに日々の診療を行っている。

妊娠中に便秘になりやすいのはなぜ?

ホルモンの働きと大きくなる子宮が便秘の原因

妊娠すると便秘になりやすい原因はおもに2つあります。ひとつは、妊娠を維持するために分泌量の増える黄体ホルモン(プロゲステロン)が、胃や腸などの消化器官の筋肉をゆるませてしまうこと、もうひとつは、子宮が大きくなることで腸が圧迫されることです。これらのことが原因となって消化管の運動が弱まり、胃腸を食べ物が通過するのに時間がかかったり、便を送り出す働きが弱まったりして便秘を招きやすくなってしまいます。腸の運動が弱く便が滞ると、ガスが発生しておならも出やすい状態になります。

水分の不足も便秘を引き起こす

加えて、つわりの時期には、嘔吐したり唾液が止まらなくなったりと体の水分が失われがちに。しかも思うように水分補給がしづらいので、脱水症状に陥りやすくなります。新陳代謝が活発になって汗をかきやすいこと、子宮に送るために血液量が増えることなども重なって、とにかく妊娠中は水分不足になりがち。便が硬くなってしまうと便秘だけでなく、痔になる可能性もあるので注意が必要です。

便秘になりにくい生活にシフトしていこう

<便秘改善ステップ>① 排便習慣をつける

まずは、朝に排便するリズムづくりをしましょう。朝食は必ずとることと、早起きして時間の余裕をもつことが大切です。食べ物が胃に入ることで腸が動き出し、排便が促されます。起きがけに飲む冷たい水や牛乳も効果があります。また、便意を感じたときに我慢しないことも大切。我慢してばかりいると水分が抜けて便が硬くなったり、直腸が鈍感になって便意を感じなくなったりします。仕事中でもいつでも、便意を感じたらすぐトイレに行くようにしましょう。

<便秘改善ステップ>② 水分や食物繊維をとる

便通をよくするには、適度な水分と食物繊維の両方の摂取が欠かせません。つわりで飲むことがつらい時期には汁物やスープ、あるいは炭酸水や氷でも水分は補えるので、どんな形でも水分摂取を試みましょう。一方、食物繊維には、善玉菌を増やし便を軟らかくする「水溶性」と、便のかさを増やし腸を刺激してその動きを活発にする「不溶性」があります。両方を含む食品をバランスよく食べましょう。生で食べるよりも加熱すればかさが減り、摂取できる食物繊維の量が多くなるのでおすすめです。

●水溶性食物繊維の多い食品:海藻類、くだもの、もち麦、大麦など

●不溶性食物繊維の多い食品:とうもろこし、れんこん、にんじん、かぼちゃ、ほうれん草、ブロッコリー、モロヘイヤ、アボカド、きのこ類、枝豆、りんご、おから、ひじき、こんにゃく、切り干し大根、干し柿、玄米ご飯など

※里芋、大根、ごぼう、もも、豆類、納豆、きなこ、干しイチジク、干しプルーン、ライ麦パン、そばなどの食品には、水溶性・不溶性のどちらも多く含まれています。

<便秘改善ステップ>③ 適度な運動で腸を動かす

便秘の大きな原因になっているのが運動不足。黄体ホルモンの影響で腸の運動が落ちているため、ウォーキングやストレッチなどの軽い運動を取り入れて、腸を動かすように働きかけをしてみましょう。いつもより少し多く歩くようにしてみるだけでも効果はあります。

<便秘改善ステップ>④ 産婦人科で薬をもらう

それでも便秘が改善しないときは我慢せずに産婦人科で相談し、便秘薬を処方してもらいましょう。便秘薬には、便を軟らかくする薬と腸の動きを刺激する薬の2種類がありますが、妊婦さんには、便に水分を増やし軟らかくして便通を促す酸化マグネシウム系の薬が、効き目もおだやかなため処方されています。服用したら、水分もしっかりとりましょう。

便秘を改善し、安心のマタニティライフを

妊娠中だからこそ、便秘解決を目指そう

排便は、少なくとも2~3日に1回はあるように、生活リズムを整えていきましょう。「便秘はいつものことだから」と何もしなかったり、自然なお通じにこだわりすぎて便秘薬を飲まずにいたりして便秘が続いてしまうのは、妊娠の経過にもよくありません。例えば、ひどくなった便秘はおなかの張りや痛みを引き起こしますが、これが便秘によるものなのか、子宮に何か問題があるのかの判断がつきにくくなってしまいます。日頃から便通をよくして、便秘が原因になるような腹痛はなるべく減らし、妊娠期間を安心して過ごしましょう。

この記事のまとめ

「いつもの便秘」と思わず、生活・食事・運動の3点から改善を

腸の動きが鈍くなってしまうことで、妊娠期間はどうしても便秘になりやすい状態です。朝食をとって朝に排便する習慣をつけること、水分と食物繊維をしっかりとること、適度に体を動かすこと、この3つを心がけて腸の動きを改善していきましょう。おだやかな効き目の便秘薬の助けを借りるのも一つの方法です。

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構成・文/
福永真弓
イラスト/
小波田えま

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