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【医師監修】妊娠初期の腹痛は何が原因?対処法は?受診の目安は?

妊娠初期に限らず、腹痛は多くの妊婦さんが経験します。この記事では、妊娠初期に多い腹痛の各症状から、考えられる原因と対策について解説します。
妊娠に直接関係がない腹痛で、症状が軽ければ様子をみてもいいですが、なかには早急に受診が必要なものもあるので、注意が必要です。

監修医師

宋 美玄先生

丸の内の森レディースクリニック 院長

医学博士。大阪大学医学部附属病院、りんくう総合医療センターなどを経て川崎医科大学講師就任。その後、ロンドンのFetal Medicine Foundationへ留学。胎児超音波の研鑽を積む。
周産期医療、女性医療に従事しながら、テレビ、インターネット、雑誌、書籍で情報発信を行う。産婦人科医の視点から社会問題の解決、ヘルスリテラシーの向上を目的とし活動中。

妊娠初期に起こりがちな心配のいらない腹痛:最も多いのは便秘

心配のいらない腹痛①
便秘による痛み

妊娠初期の腹痛で最も多いのは、便秘によって起こる腹痛です。人によって少しずつ表現が異なりますが、主に下腹部が「ズキズキ」「キリキリ」するような痛みと形容されることが多いようです。下腹部が張っているような感覚があって、便が通常の間隔以上に出ていない場合、便秘を疑ってみましょう。

妊娠中は便秘となる人が増えます。原因については、妊娠によって女性ホルモンの一つであるプロゲステロンの分泌が増えることが挙げられます。プロゲステロンは妊娠の維持に必要なホルモンで、平滑筋という筋肉を緩める作用もあります。
これは、平滑筋でできている子宮が胎児の成長に合わせて大きくなっていくためにとても大切な働きなのですが、一方で、この働きのために同じ平滑筋である腸のぜん動運動も少なくなってしまう作用があることも知られています。

市販の便秘薬のなかには妊娠中に使えないものがあります。主治医に相談すると、妊娠中でも服用できる便秘薬を処方してもらえます。
便秘そのものが妊娠に影響を与えることはありませんが、ほうっておくと食欲低下などにもつながりますので、早めに解消できるようにしましょう。

そのほか、温かい水分を多めにとる、温水洗浄便座を利用して温水で肛門周りを刺激するなどの方法も試してみましょう。

心配のいらない腹痛②
左右のどちらかが引きつるような痛み

腹部の左右どちらかが引っ張られるような痛みは、子宮を支えている円靭帯が、子宮が少しずつ大きくなっていくことで引っ張られて起こる痛みです。「チクチク」と表現する人もいれば、「ズキズキ」という人もいます。「円靭帯痛」呼ばれることもあります。

この痛みも正常なものなので、少し横になって休んでみて治るようならOK。反対に、しばらく休んでも痛みが収まらず、むしろ強くなってくるような場合は、他の原因の可能性があるので、受診をしましょう。

心配のいらない腹痛③
子宮が収縮するような痛み

「生理痛のような痛み」「キューっとした痛み」などと形容する人もいます。子宮は、妊娠する前から何分間かに一度収縮したりして、周期的にぜん動しています。妊娠していることで、普段は意識していなかったその動きに過敏になって、痛みとして捉えている可能性があります。

こうした痛みも、少し休んで収まるようであれば心配はありません。ただし、次項で紹介するように、出血がみられたり、痛みがだんだん強くなってきたりする場合は、主治医の診察を受けましょう。

妊娠初期に気を付けたい腹痛:下腹部の痛みに加えて性器からの出血がみられるとき

軽い腹痛と少量の出血があるとき

痛みがあって、性器からの少量の出血がある場合は、切迫流産、または流産の可能性があります。切迫流産とは、流産が発生するかもしれない状態ですが、受診して、おなかの胎児に心拍がみとめられたら、妊娠継続の可能性があります。

妊娠初期の腹痛と不正出血は珍しいことではなく、必ずしも胎児にトラブルがあるわけではありません。しかしながら、出血量と症状の重さは必ずしも比例せず、軽い腹痛で少量の出血でも流産となることはあります。流産は全妊娠のおよそ15%という確率で起こりますが、妊娠初期(特に妊娠12週未満)ではそのほとんどが染色体異常という胎児側の原因で起こり、くい止める有効な手段がないのが実情です。このため、少量の出血や軽度の腹痛があっても、あわてて受診する必要はなく、翌日以降か次の健診の際で充分とされています。

腹痛に加えて多量の出血があるとき

ギューっと収縮するような、重い生理痛のような痛みが持続し、陣痛のように波がある(痛みが続いた後で、止んで、しばらくしてまた痛む)ような腹痛を感じたり、生理よりも多い出血がみとめられる場合は、流産が進行している可能性が高くなります。健診を待たずにすぐに主治医に連絡をして指示を仰ぐか受診をしましょう。

受診の目安は痛みの強さと出血の量

強い痛みや出血の量などに注意

妊娠初期におきがちな腹痛の種類を前で紹介しましたが、自分では原因の判断はつかないことも多いでしょう。早めに受診がすすめられる目安としては、下記のような状態が挙げられます。

□出血量がおりものシートで間に合わない
□痛みが間欠的で、何度も起こる(陣痛に似ている)
□だんだん痛みが強くなっている
□うずくまるほどの強い痛みがある
□発熱している
□嘔吐などほかの症状をともなう

特に痛みが強い場合や出血量が多い場合はまず主治医に連絡し、タクシーや家族の運転などで早めに病院へ向かいましょう。発熱している場合は、感染症や虫垂炎など何らかの急性疾患も考えられます。おなかが痛いくらいで、と我慢せず、正しい診断を得ることが大切です。

妊娠検査薬で妊娠判明したばかりの人も、早めに受診を

妊娠検査薬で妊娠反応があり、その後、まだ産院へ行っていない場合、下腹部痛と性器出血が見られたら、早めに産院へ行って、診察を受けることをおすすめします。異所性妊娠や胞状奇胎など、ほうっておくと重大な事態になる異常妊娠との鑑別が必要だからです。ちょっとした痛みだから、と甘く見ず、まずは正常妊娠かどうかを確認してもらい、下腹部痛の相談をしましょう。

この記事のまとめ

つらいときや不安なときは思い切って相談を

妊娠初期の腹痛は、大きな心配がいらないものと、すぐに受診が必要になるものがあります。受診の目安は、痛みの強さ、出血の有無やその量、痛み始めてからの時間の長さなどいくつかポイントがありますが、自分がつらいと思ったら我慢しすぎないことも大切。また、不安な気持ちで夜も眠れない、というのも良くありません。主治医に早めに連絡をとり、相談してみるのがよいでしょう。

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イラスト/
山村真代
構成・文/
秋田恭子