【助産師監修】【母親学級・両親学級特集】お産は赤ちゃんとの協働作業というけれど、どういうこと?
~全5回の連載特集でお届けします~
【プレママ レッスン3】
第3回目はお産の時赤ちゃんもがんばっているとはどういうことなのかを説明していきます。出産のとき、ママは大きな痛みに耐えますが、この時によくかけられる「赤ちゃんもがんばってるからママも一緒に!」という言葉。では、赤ちゃんは何をどうがんばり、何に耐えているのでしょうか。
監修医師
浅井貴子先生
フリー助産師
赤ちゃん訪問指導歴約30年のキャリアを持つフリー助産師。毎月30件、年間400件近い新生児訪問を行い、育児のアドバイスや母乳育児指導を実施。赤ちゃんのボディケアを始め、ベビーマッサージやマタニティエクササイズのインストラクターを始め、助産師としての知識を活かした産後の会陰ケア、おっぱいケア、ママのためのスキンケア、産後のメンタルケアなど、妊婦さんや産後ママ向けのセミナー講師を多数務める。
赤ちゃんの「つらさ」と「がんばり」って一体何?
陣痛の度に訪れる「息苦しさ」
お産はママにとって陣痛がつらい、痛くて大変というイメージですが、実は赤ちゃんもおなかの中でしんどいときを迎えています。陣痛は赤ちゃんが外に出るために起こる子宮の収縮です。
子宮が収縮すると一時的に赤ちゃんへ送り込まれる血液の量が少なくなるため、赤ちゃんも息苦しい状態になります。大人で例えるとふーっと息を吐き切って、そのままこらえている感じです。
陣痛は1分程度なので、過度に赤ちゃんが苦しくなることはありませんが、助産師に「息を吐いて」「深呼吸して」と言われるのは少しでも多くの酸素を赤ちゃんに送り届けるためでもあるのです。
子宮の中でかかる「強い圧力」
陣痛が起こっている間、子宮の中は収縮のため赤ちゃんの居場所がなくなり窮屈になります。陣痛の時の圧力は小さな赤ちゃんにとっては大きなものです。例えるなら身動きが取れないくらいの満員電車で、四方八方から押されて体中が悲鳴を上げているときのよう。もしかするとその数倍の圧と痛みかもしれません。
ママがつらい陣痛を耐えているとき、同じように赤ちゃんも満員電車の中でぎゅうぎゅうに押されているような圧迫感を感じているのですね。
狭い産道を「こじ開ける力」
赤ちゃんが外に出るために通らなければいけない産道の太さは、通常はトイレットペーパーの芯くらい。また、産道の壁は小鼻くらいの厚みと硬さがあります。
この穴を、赤ちゃんは下降しながら自分の頭が通れるまで、ゆっくり時間をかけてのばしていきます。イメージで言うと太いゴムホースを、自分の頭を使ってぐーっとのばしている感じです。かなりの力が必要なのはもちろん、狭くて強い圧がかかった産道を進んでいくのは小さな赤ちゃんにとってはとてつもない重労働です。このときも赤ちゃんはママの陣痛からくる圧力でぎゅうぎゅうに押される圧迫感を全身にうけながら前へ進もうとがんばっています。
コラム
産道を通るときの「骨」のお話
赤ちゃんは頭蓋骨を自分で重ねてママの骨盤に潜り込んでいきます。「頭蓋骨を重ねるとはどういうこと?」と思うかもしれませんが、これは頭の骨の隙間を埋めるように折りたたんでいるイメージです。
また産道を通り出てくるときの圧力が強すぎるため、場合によっては骨折することもあります。「大丈夫なの?」と感じるかもしれませんが、赤ちゃんの骨は形状記憶合金のように柔らかいので大丈夫。骨自体にも柔軟性があるため大きな痛みはないと言われています。ちなみに骨は外の世界に出てきて数日で元に戻り、その後しっかりと硬くなっていきます。
この記事のまとめ
陣痛で苦しいときは赤ちゃんのがんばりを思い出して
お産はよく山登りにたとえられますが、まさに赤ちゃんもママと一緒に山登りをしているくらいしんどいもの。息苦しさ、圧迫感、前へ進む力…。これもすべて陣痛というママの助けがないと赤ちゃんは外の世界に出られません。ママも辛いけど赤ちゃんもがんばってるよ!とはこういうことなのです。
次回のレッスン4「産後すぐ(産じょく期)のママの体とは?どう過ごすのが正解?」に続きます。
- 構成・文/
- 中島典子
- イラスト/
- タオカミカ